第18話 頑張りますにゃ
僕たちはメイカの実家の
「パパー! ただいまにゃ!」
「メイカ。後ろにいるのはお友達か?」
メイカが工房を覗くと、中にはタンクトップを着たおじさんが立っていた。
僕にとっても、メイカにとってもメリットがあること。それは彼女にパーティの『整備士』になってもらうことだ。
リーシャもレティも人間の姿だから忘れそうになるけど、見た目がボロボロ。どこかのタイミングできちんと整備しておきたいと思っていたから、メイカにやってもらえたら嬉しい。
この方法なら僕たちは装備品の整備をしてもらえて嬉しいし、メイカは家業である鍛冶屋の仕事を引き継ぎ、自分の才能を磨くことができる。まさにウィンウィンな恩返しじゃないだろうか。
メイカは父親にこれまでの経緯を話した。僕がトロールを倒したこと、メイカが冒険者を辞めたこと。そして、彼女が僕のパーティの整備士になるということ。
「……なるほどなあ」
メイカが説明を終えると、彼の父親は何度か
「あんたがルカさんってことでいいんだよな?」
「はい。ルカ・ルミエールです」
「俺はスミス・マイオニアってんだ。娘が助けられちまったみたいだな。礼を言うぜ」
スミスさんは
「パパ。助けてもらったお礼に、ルカさんの武器を整備してほしいんだにゃ」
「武器? 別に構わないが……それはどこに?」
そうだ。スミスさんはリーシャたちが
「……今のはどういうことだ!?」
「僕のスキルの効果なんです。僕のスキルは神器級のアイテムを人間に出来るみたいで」
「にわかには信じられない話だが……少し見てみてもいいか?」
スミスさんはリーシャを手に取って、顔を近づけて細部を観察する。感心したようにゴクリと
「これは凄い……傷ついている部分は多いが、とんでもない
『かもしれないじゃなくて本物なんですけどね! ああっ! ルカさん、この人えげつないくらいジロジロ見てきます!』
ごめんねリーシャ。我慢して。
「しかし困ったな……こんな
リーシャたち
「パパ、おじけづいちゃダメにゃ!」
スミスさんが腕を組み唸っていると、メイカがグッと拳を握って言った。
「ルカさんのお願いは、なんとしてもメイカが叶えるにゃ! メイカもこの目を使ってお手伝いするにゃ!」
「おお、確かにそれならなんとかなるかもしれないな!」
メイカは目の前でピースをしてキラっと
「メイカのスキルは<ヘファイストス>。装備品の特徴を分析することができるんですにゃ」
そりゃまた鍛冶師っぽいスキルだなあ。僕はリーシャのスキル、<サンシャイン>を発動する。
▼▼▼▼
メイカ・マイオニア レベル1
スキル
<ヘファイストス>
アイテムの使用・製造・修理方法を『視る』ことができる。その程度はアイテムのランクによる。
▼▼▼▼
「すごいスキルだね。逆になんで今まで荷物持ちをやってたの?」
「メイカは
「この子は生まれつき才能があったからな。俺としては、仕事を継いでほしかったんだが……娘の夢を邪魔するわけにはいかないだろ?」
なるほど、理解のあるいいお父さんだね。
「しかし……リーシャさんの情報はほとんど見ることができないですにゃ。まるで強い光を放ちすぎて、目がふさがれている感じですにゃ」
『当たり前ですよー。だって私、
リーシャがうるさいので話を進めるとして。
「どう? 修理できそう? ボロボロになっている部分だけでも直ったらいいなあって思うんだけど……」
「他でもないルカさんのお願いですから、絶対になんとかするに決まってますにゃ! メイカは諦めません!」
もしかして、それは僕が森の中で言ってたやつを真似してるんだろうか。心なしか表情まで真似されている気がする。
「パパ、さっそくリーシャさんを修理するにゃよ!」
「おう! 全身全霊で行くぞ!」
猫耳親子は元気よくそう言うと、工房の奥の方へ行ってしまった。レティと僕だけがポツンと残される。
「私は後みたいね」
人間の姿に戻ったレティ。
「そうだね。ちょっと待ってようか」
工房の外にベンチがあったので、座って待たせてもらうことにした。
「そうだ、レティ。とんとん拍子で僕たちの後についてきちゃってるけど、大丈夫なの?」
「なにが?」
「ほら、レティは人間の姿になったんだし、何をするのも自由だよ。リーシャは僕についてきたけど」
僕がそう言うと、レティは少し考えて。
「でも、ルカの後について行った方が、興味あること多そうだから」
「そっか」
どうやら、レティも僕の仲間になってくれるらしい。
「レティのスキルを見てもいい?」
「うん」
▼▼▼
ルカ・ルミエール レベル42
スキル:
<アーマー・コミュニケーション>
装備品と心を通わせることができる。程度は装備品に形成された人格に依存する。
装備品:
スキル
<イリュージョナル・スタイル>
実体を
<マジカル・ミラー>
反魔法効果を付与する。
<インビンシブル・アーマー>
どんな攻撃でも一度だけ無効化することができる。1体の相手に対し1日1回のみ使える。
▼▼▼
「なるほど、レティのスキルは防御に関するものだね」
<イリュージョナル・スタイル>はもう何度も見ているから飛ばすとして。二つ目の<マジカル・ミラー>はヴェルディのパーティの
「これって、本当に『どんな攻撃でも無効化』できるの?」
「ええ。それがなければあの子を危険に晒すような真似はしないわ」
そういう意図があって、メイカに攻撃するように仕向けたのか。ただ危険なことをさせていたわけではないらしい。
「そうだ、レティはどうしてあの場所にいたの? リーシャはダンジョンにいたんだけど、何も覚えてなかったんだ」
僕がそう問いかけると、レティは少し頭を悩ませて。
「……わからない。ただ、誰かが昔、私のことを使っていた……ような気がする」
「レティを所有している人がいたってこと?」
「そうね。私のことを装備して、敵と戦った人がいた……ぼんやりと記憶にあるわ」
神器である彼女を装備していた人か。きっとすごい人なんだろうけど、情報がないから何とも言えないな。
そのあと、リーシャの整備が終わり、同じようにレティがピカピカの鎧になるころには、すっかり夕方になっていた。
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