第8話
一の宮は、東国の大国守に任ぜられたうえで、まことに異例ではあったが、直々の赴任が申し渡された。
二の宮は、元々心身に不調がおありで、お上も、このお方には心を悩まされた挙げ句、女一の宮とともに、後宮の一角に住むことをお許しになった。
三の宮は、北郊の山寺にお預けとなった。
そして、中宮については、特段お咎めを受けるべくもなく、お上は、今まで同様、中宮が後宮に住まい、一男一女をこれからも養育することをお望みではあった。
ところが、中宮は、お邸に一旦退出したかと見る間に、そこでお髪(ぐし)を下ろしてしまわれた。
中宮は、以後、二度と宮廷に上がらず、ほどなくして病没されたのであった。
元々、中宮は、お上よりも年長で、自負心の非常に高いお方であった。
結局、お二人は、最後まで心を親しく通わせるということがおありでなかったのである。
この一連の出来事は、源氏に深い痛手を負わせたが、時が過ぎ、前の関白の若君達が成長するにつれ、その英資がここかしこに漏れ伝わるようになっていった。
源氏の系累にあたる各門地のほうも、それにつれ、今や春を迎えようとするのではないかと、あらゆる方面に疑心暗鬼を与えたのである。
お上も、源氏の累代、多年に及ぶ皇国(みくに)への奉仕を、あのお怒りがあったとして、決してお忘れになれず、また、源氏の今後をも考慮して、閑院殿に太政大臣まで進ませることを、引き延ばしに引き延ばさざるを得なかったのである。
閑院殿も、強引にそれをお上に迫り得るほどの力を今、発揮するべきではないと考えた。
実際、自分がこの宮廷での最高実力者である訳だし。
源氏に対して雅量を示すことにもなっている。
誰もが、これを欺瞞とは思うものの。
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