第13話 禁断の恋?

「私と付き合わない?」


それは突然、妹の、楓の口から発せられた。

「いや、ありえないだろ。僕とお前が付き合うなんて。それに、兄妹なんだからそんなの無理に決まってる」

「なんで無理なの?法律で決まってるから?周りから痛い目で見られるから?猛反対されるから?好きっていう気持ちは、誰かや何かが邪魔していいものじゃないと思うんだけど。好きな人と付き合うのが正解でしょ?」

「…………」


僕は楓の圧に圧倒され、何も返せなかった。

確かに、恋愛は自由ではある。兄妹間での恋愛は、世の中的に認められている訳ではないけれど、密かに兄妹で付き合っている人もいるかもしれない。

なので、否定しきるのも間違っている。

ただ、実際そういう立場に立たされるとどうしたらいいのか分からない。いい返事が出来る訳でもないし、断るのも少し心が痛い。


「僕は……」

「テッテレー!ドッキリでした!」

「?!」


僕は、突然の事過ぎて状況の整理が追い付かない。


「ドッキリ?」

「まんまと引っかかったね!」


未だに理解が出来ない。


「光来君が浮気をする心配はなさそうね」

「みたいだね!」

「渚…さん?それにサクラまで」


僕の目の前に現れたのは、この場にいるはずのない渚さんとサクラだった。

何故、この場にいるはずがないかというと、この2人は今日、買い物に行く予定だったからだ。

それなのに、僕たちの目の前に現れたのだ。


「お兄ちゃん、ドッキリだってば」

「何がドッキリなんだよ!渚さんとサクラがここにいる事がか?それとも今日ここに来たこと自体がドッキリだったのか?」

僕は、少し慌てた口調で言った。

「前者はあってるけど後者はハズレ。それと、私がお兄ちゃんに告白した事がドッキリ!」

「あ……」


僕はやっと理解した。どんなドッキリを仕掛けられていたのかを。

楓の発言と渚さんたちの登場、そしてさっきの発言から考え、ドッキリの内容を把握した。


「僕が浮気しないかどうかをモニタリングしていたのか」

「正解!」

「くそったれ~~~」


まんまと騙されてしまった。

ドッキリという物は恐るべしだ。


「なんでそんなドッキリしかける必要があったんだよ」

場は少し落ち着きを取り戻し、話を再開させる。

「渚さんが、お兄ちゃんが浮気しないか心配だったからに決まってるでしょ?」


確かにこないだそんな事をチラッと言っていた気がしなくもない。

いや、言っていた。確実に。

しかし、あの時は冗談と言っていたはず。なのに何故……。


「お兄ちゃん、冗談とか言ってたような、とか考えてたんじゃないでしょうね?」

ギクッ。

今完全に思考を読まれた。僕の妹には超能力でもあるのでしょうか。


「図星か。そんなのただ言ってるだけに決まってるでしょ?本当は心配なの!だからお兄ちゃんはモテないんだよ」

「………」

返す言葉がない。


僕のメンタルは、この数分でボロボロになってしまった。


「という事で、無事ドッキリも成功したので、4人でテーマパークを満喫しよう!」

「お~~!」


果たして、このメンタルで楽しむことが出来るのだろうか。


と考えてはいたが、思いのほか楽しむ事ができ、帰る頃にはドッキリを掛けられていた事などすっかり忘れていた。

それがいい事なのか、悪い事なのかは置いておいて、皆で楽しめたのでチャラである。


「お兄ちゃん、今日みんなうち泊まるけどいい?」

「いいんじゃないか~、ん?今なんて?」

「ん?みんな泊まるからねって」

「な~に~~!」


これもドッキリなのだろうか。何かのドッキリなのだろうか。

全てにおいて疑心暗鬼になってしまう。


「お兄ちゃん、普通に泊まるだけだから、そんな怖い顔しないでよ。あ、私たちの部屋に入ってくるのはダメだからね?」

「そ、そんな事するわけないだろ!」


正直、少し考えた。何故なら渚さんがいるのだから。


「私、光来君の部屋で寝ていいかな?」

「?!」


今、渚さんはなんと仰ったのでしょうか。僕の部屋で寝ていいですか?と聞いたのでしょうか。僕の聞き間違いでは無いですよね?


「もちろん、大歓――」

「ダメに決まってるでしょ!何考えてるの、渚さんは!」

「恋人だからいいかなと思って」

「まだ未成年でしょ!節度あるお付き合いってものがあるでしょ!」


楓の言っている事は正しい。未成年が一線を越えてしまうのは良くない事だ。

しかし、渚さんには時間がない。人間とは違い、一定の期間しか存在することが出来ないのだ。故に、未成年だからという言葉では揺るがないだろう。


「そうだね。節度あるお付き合いをだね」


あれ~?僕が思っていた返事と違ったな。

渚さんはやはり、どこか抜けている部分があるようだ。


「なんか、みんなで盛り上がってるけど、私もいるんだからね?忘れないでよ!」


サクラは、ほったらかしにされ拗ねているようだ。


「ごめん、ごめん!さぁ、お泊り会の始まりだ!」


僕たちは、お泊り会と言ったらという事で、コンビニでお菓子を買い、家に戻った。


「今日のお泊り会のテーマは『話せ!人生の恋バナ暴露!』」

「いや、待て待て。なんだそのテーマ。そんなテーマ誰も賛成するわけな――」

「賛成」

「賛成」


そうだった。女は恋バナが大好きなんだった。

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