四人。

街のやや影に建った、四階建てのビル。

その三階のワンフロアに四人ほど集まっていた。


集まった四人は、全体的に若い。

肩くらいの髪の長さの小柄な若い女、白人で体格の良い若い男性、長い黒髪で長身の女性、そして十代半ば程の少年―洋岸ようぎしとりでだ。


とりでが優しく口を開いた。

崎田さきたさん、トムさん。田村が沙弥トリガーに全部話しちゃったみたい。

護衛の女は洋岸くりぃむだったようで無傷。

町田旭も生きていて、向こうはむしろ殺気だってる。

どうする?今からでも寝返って平和に暮らしても良いよ。

あちらは警察側だから急に殺したりはしないだろうし。」

崎田さきたと呼ばれた女は、俯いて考え出した。

トムはまっすぐ砦を見て、首を横に振った。

「私たちがまた酷い目に遭わないように、ギフトを持った人だけを集めて話し合う。それだけの目的なのだからこれは正義だ。トリデが迷惑でなければまだ使ってくれ。」

砦は柔らかく目を細めた。

「このフロアを借りるのにギフト持ちでない……親戚の祥子しょうこさんに協力を得てしまったから、トムの言う『ギフトを持った人だけ』は、もう出来なくなってしまった。」

「仕方ありません。……その、ショーコさんは、ヨウギシの方なのですね。」

トムはチラリと長身の女性に視線を向けた。

女性、祥子はにこりと綺麗に微笑んだ。

砦と同じ微笑みに、トムは血の繋がりを感じた。

「親戚なんだ。余り似ていないけれど。」

砦の言葉に、トムは「いいえ!」と声をあげた。

「前回のショーコさんとトリデの関係を聞いても良いですか?」

「祥子で良いわ。……私も興味ある。聞かせて、砦。」

砦に視線が集まった。

が、小さく笑って頬を染めるだけだった。

崎田が思わず聞く。

「前回も、仲が良かったんですか?」

「良くなりたかった。僕はずっと。ずーっと。振り回されていたから。」

砦は祥子を見た。

「祥子さんに憧れていたんだ。

だけど、役割があったからずーっと振り回されて。僕から一方的に憧れていただけさ。

綺麗で、真っ直ぐで、澄んでいて……僕の、憧れの人なんだ。」

熱っぽく語る砦にも、祥子はまた綺麗に笑った。

「嬉しいわ。

聞いた限り酷い目に遭わされたみたいだから、私もあなたたちに協力したいの。

良いかしら?」

祥子は口数の少ない崎田に視線を送った。

びくりと肩を痙攣させ、崎田は、少しだけ唇を震わせた。

断れるような場面ではない。

「田村さんは?……使い捨て、ですか?」

「とんでもない!」

砦は食い気味に応えた。

「僕らからはもう田村に出来ることはないよ。

ここから先は田村が決めることだ。僕らはもう前みたいに駒じゃないんだから。」

彼の顔に浮かぶのは、貼り付けたような陶器の笑顔。

トムは素直に受け入れている。


崎田は、心臓に冷水を入れられたような感覚に体を硬直させ、首元に脂汗を滲ませた。


その様子を、祥子が鋭く眺めていた。


「不安よね。

なんだか此方こちらが悪いみたいな流れだから。」

ふわりと、蕩ける薫りを纏った祥子が崎田に寄り添い、肩を抱いた。

同性ながらに美しい顔と声が近づき、崎田は目をうろちょろさせた。

「大丈夫。何にも間違ってないわ。

骨を折ってしまったあの男だけがおかしかったのよ。ほら、死人を出したのだってあちらサイドなのよ?」

「でも、手を出したのは……。」

祥子は崎田の唇に指を当てた。

「話し合いに呼ぼうとしただけ。それの何が悪いのかしら。」

くらくらと、崎田の頭が鈍っていく。

「疲れているのね。今日はホテルに泊まりなさい。

とても安全なホテルがあるから紹介するわ。

……砦さんたちも来られるわよね?」

砦とトムは頷き、四人はビルを後にした。







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