上等だ。
ドアからしてもう
間違いない。目的の飴村の家だ。
表札はないが、ショッキングピンクと紫で彩られたドアが飴村を
恐る恐る奇抜なデザインのドアノックを掴んだ…ところでドアが開いた。
「ぶ!!!」
ドアは梓の顔面に直撃した。
「あらガキ。居たの。
今から町田のところに行くわよ。」
「その…町田さんからの報告を伝えに来たんです…。」
梓はぶつかった鼻を抑えながら、反対の手でメモを飴村に渡した。
飴村の顔は、赤くなり青くなり、また赤くなった。
手が震え、まるで火山のように……ギラついた目で梓を睨み、首根っこを掴み家のなかに引っ張りこんだ。
「ひぃ!!」
梓は情けない声を上げて、玄関に入ってすぐの廊下に尻餅をついた。
飴村は鍵を全て閉めた後、梓の襟を掴んでを持ち上げた。
「沙弥さまが…骨を折られたってどういうことよ。」
「ぼ、ぼくも報告を受けただけで…ぼくだって知りたいですよ!」
「町田と景樹の犬が居たんでしょ!?なんで
飴村は鼻息荒く梓に詰め寄ると、梓の涙目に毒気を抜かれ、一度梓を下ろした。
(殺されるかと思った。)
ゆっくり顔を上げると、飴村は爪を噛んでブツブツ呟いていた。
「この報告じゃもう……町田が生きてるだけでまだ救いがあるけれど……ただ、これからどうすんのよ。新入りはチビよ。」
ちらっと梓に視線をやると、びくついて縮こまっている。
飴村は深いため息をつき、靴を脱いで部屋の奥に入った。
「何してんの。アンタも来るのよ、アズサ。」
「は、はい!」
梓は慌てつつも、丁寧に靴を並べてから飴村のもとに向かった。
・
・
サラサラと書き上げられていく図面を、梓は食い入るように見ていた。
飴村は情報を図面に書き直している。
「つまり、沙弥さまは怪我をした状態で連れ去られていて、町田は瀕死の状態で路地に捨てられていたわけね。」
「はい。ナイフの切り傷みたいなのはなかったんですが、顔を中心に酷い色に腫れ上がっていて…両腕の…この辺が折られていました。」
梓はトントンと自分の上腕を指差した。
「わざわざそんな所の骨を折って…刃物じゃなく鈍器…いや、グローブをしていたなら拳かしら。
それで殺そうとするなんて…効率悪いわね。」
「筋肉質と言っていましたから、体が武器なのでは?」
「それにしても……。町田が隠れているのに気がつくのが遅れたのよ。
せっかくそれだけのスキルがあって、気配を消して殺そうとしているのに…。
それを筋力があるからといって殴り殺そうとするなんて考えがたいわ。時間がかかるし、実際殺しそびれてるし。
それだけが理由なら間抜けも良いところよ。」
「間抜けなんじゃないですか?」
飴村はプッと吹き出して、大笑いしながら梓の頭を手のひらでバンバン叩いた。
「あっははは!言うわね!
まあそうね。深読みせずに見て、スキルを使いこなせない残念ちゃん、筋肉ナルシストドS野郎って可能性もあるわね。いや、その可能性が高いわ。」
飴村は人差し指の間接を唇にあて、ニヤリと笑った。
「上等よ。どこの馬鹿か知らないけど、気色悪い手で沙弥さまを傷つけた罪、輪廻転生終わるまで償わせてやるわ。」
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