仕立て屋 ②
落ち着いた後、飴村は梓の採寸をした。
サラサラとスケッチブックにイメージを描き、沙弥と話す。
梓も覗いたが、沙弥に合わせたデザインだったので、どれになっても良いなと思い黙って眺めていた。
「ではこちらで…大きめに作りますね。」
「ああ、育ち盛りだからな!出会った時はもっと小さかったのだぞ!」
「……。豆粒チビだったんですね。」
少し不機嫌な飴村の声を意に介さず沙弥は続ける。
「この年齢の子はすぐ大きくなるのだな。心の成長も凄かった。とても頑張ったのだよ…アズサくんは。」
微笑んで手招きをする沙弥に、おずおずと梓が近づいた。
「よしよし…よく頑張ったな。あの
「景樹さんは時々怖いですが、とても親切でした。」
「景樹!?このガキを景樹が認めたわけ⁉」
「飴村、彼はアズサくんだ。」
「ア…ズサ。」
ぐぬぬと悔しそうに声を潰し睨む飴村。
「チビだからって甘く見すぎちゃだめですよ!こいつ男なんですよ!ぷんぷん匂います!悪い虫に育ちます!」
「そうなったら追い出すさ。」
パっと飴村の表情が明るくなった。
「飴村、お前もな。」
どよんと飴村に影が落ちた。
くるくるかわる飴村の表情と態度に、梓は思わず息を漏らした。
「だろう?」
沙弥が微笑みながら言う。
「飴村はとても愉快なのだ。残念ながら景樹くんやアズサくんの気持ちと同じものを抱いてしまっているがな。」
(じゃあ四角関係!?)
梓が心配そうに目を歪めると、沙弥はくすくすと笑いだした。
「誰とも恋愛関係になる気はないよ。その願いが行動に出たら、退場してもらう。」
そしてすぐに真っ直ぐ、いつもの目で突き刺す。
沙弥は強い……針のような眼差しで。
二人を磔にした。
「君らも町田君みたいに友人で居てくれたら最高なのに。」
ため息をつく沙弥に、飴村は小さく漏らした。
「無理です。」
梓も
「貴女が魅力的すぎるので。」
重なる声に、飴村と梓は顔を見合わせ、少しだけ表情を緩めた。
とても不毛だ。
沙弥は誰のものにもならない。欲しがれば退場させられる。
だけど、どうしようもないんだ。
好きなのだから。
どうしようもなく。
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