第17話

何回目かのお店を手伝う日

妹が家に来てくれたので

子供たちはお願いしてみてもらうことになった

子供がいないので

だいぶ気が楽だった


その日来てくれたお客さんに

レンは私が嫁だと紹介して

3人で少し雑談する時間があった


奥さん大変やなー店して!偉いなー旦那!

というお客さんに

レンは

今までほんまに迷惑と苦労ばかりかけたんで

こっから頑張らんとですねー!

と返していた


私はお客さんの手前

ほんっとにいろいろと勝手されたので

頑張ってもらわんとですね!

って笑って返していたが


この時のレンの言葉は忘れない

お客さん相手だから出た言葉だとしても

私は嬉しかった

そんな風に思ってくれていたんだと

本当に自分のことしか考えていない生活を

されていたので

私はそんな言葉だけで

だいぶ救われた気分になった


誰しもが言いそうなセリフだが

私にとっては忘れたくないセリフに思えるほど

私は常に底辺にいるってことだ


いつかに嫁が言ってくれたんですよね

やりたいことがないなら

いろんなことをしたり何もしなかったりして

やりたいことが見つかったら

頑張ればいーやんって

僕はそれがこいつすごいなって思って…


みたいな話もレンはお客さんとしていた

私の言葉が響いていたことがあるんだとびっくりした

レンも私の言葉を覚えてくれていたんだなと

本当に記憶喪失かな?と思うほど

レンは興味がないことは覚えていないし

少し前にした会話も覚えていないし

どこかへ行ったことも覚えていないことが多い

なので私は余計にびっくりして嬉しかった



家で妹が子供たちを寝かせてくれていたので

お店がおわったあと

レンと最後まで片付けをしたり

そのあと夜中でも開いているスーパーに

買い物に行ったりした

レンは珍しく2人なことに喜んでくれていたし

一緒に行こう

と言われたので

私はいつぶりかのレンと2人の時間を過ごした



そしてもう

レンの店を手伝うことはなかった

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