ママの匂い
こうして、<ミコナのママ>としては会えなかったけれど、不思議とミコナは悲しそうではありませんでした。
それどころか何故か嬉しささえ感じていたのです。
だって、ウル、オウ、ティーさん、フカ、ガー達からは、確かに<ママの匂い>がしたから。
もしかすると、小さかった頃に触れたママの気配を、ウル達はちゃんと出してたのかもしれません。
男勝りで肝っ玉お母さんだったというママの。
それでいてガーが臆病で泣き虫な感じなのも、ハカセがミコナに語ってくれてた、
「ママはね、小さい頃はすっごい怖がりで泣き虫だったんだよ。でもいつの間にか男の子とケンカしても負けないような女丈夫になっていったんだ」
というママの姿を知ってるから、変には思わなかったというのもあるのかも。
だから、ママの匂いも感じながら、<新しいお友達>に出会えたという感じでしょうか。
ハカセが問い掛けます。
「ミコナ、パパはこれからも研究を続けて、今度こそちゃんとした<かぷせるあにまる>を作ろうと思う。それまで待っててくれるかな?」
神妙な顔で問い掛けるハカセに、
「いいよ。パパの失敗はいつものことだもん。それに、この子達可愛いから、いい」
満面の笑顔でなかなか厳しいお言葉を。
「はは……」
ハカセは苦笑い。でも、ミコナがそんな言い方をするのはハカセだけ。そしてハカセも、信頼してるからこそ辛辣な言い方もできるのを知っています。
ミコナなりの<エール>だと。
その証拠に、
「でも、パパ、無理しないでね。パパってば、ほっとくとすぐご飯も食べないで研究ばっかりなんだもん。心配する方の身にもなってって思う」
ハカセのことを真っ直ぐに見詰めながら言ってくれたのです。
すると、ティーさんも、
「ハカセはん、こんな可愛い娘に心配かけたらあきまへんで」
と。
「……!」
その言葉に、ハカセはハッと。そのハカセの頭に蘇る言葉。
『こんな可愛い娘に心配かけちゃダメだよ』
それは、夜遅くまで研究室にこもって出てこないハカセを心配して泣いてしまった今よりもっと幼かった頃のミコナを抱き上げながらママが口にしたそれと同じ。
「うん…そうだね……」
応えたハカセの目が潤んでいたのでした。
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