第四百二十六話 発掘現場に入る時

其の場に倒れ込んだ兵器を見たライトは


「さて、今後に備えてこいつらを捕獲しておかないと」


と言って倒れ込んだ兵器の近くに紫色の玉を投げる。

するとそこに転移通路が広がり、兵器を吸い込んでいく。


「今の通路は一体何なのですか?」

「僕が捕獲するために使う捕獲用具ですよ。

異空間に送り込み、そのままの状態で取り出すことが出来るんです」


兵士に道具の事を聞かれたライトはあっさりと返答する。

どうやら道具について特に隠したりする意図は無いようだ。


「それは便利な道具ですね」

「もちろん調査したデータは皆さんにも贈りますので」

「そ、そうですか……それは助かります」


兵士は好返答するが、ライトの言動に対しての反応は明らかに戸惑っている。

其のあっけらかんとした言動が戦場らしく無く、ペースが乱されているのだろうか?


「それは良いけど、中に入る必要もあるんじゃない?

今回の目的は資材の確保なんでしょう」


アップルが中に入るように促すと他の面々も後を追って、

其の中に入っていく。


「ええ、そうですね。

兵器を捕獲したとは言え、肝心の資材を入手しなければ何の意味もありません」


兵士達も其の言葉で調子を取り戻したのか、ライト達の後を追って

資材発掘施設の内部へと入っていく。


「中は特にハイテクの機器が存在していたりはしないんですね。

僕達の世界にあったと言われる炭鉱とそんなに変わらない印象をうけます」

「その炭鉱というのは?」

「僕達の世界で燃料として扱うものを掘り出していたと言われている、

山等に掘られた洞窟の事です。

最も少なくとも僕は実物を見たことはありませんが」

「燃料を掘り出しているのに実物を見たことがないのですか?」

「ええ、燃料そのものが別のものに移行していき、

結果として炭鉱も其の役割を終えていったのです」


発掘現場の中を見たライトはふとその感想を漏らす。

実際ライトの言う通り、周辺の風景は地球の炭鉱に近い印象を受ける。

しかしその後の兵士との対話において、

ライトは直接炭鉱を見た事は無いと告げた。


「実際に見た事が無いのに似ているのですか?」

「まあ、大体の予想ではありますけど。

根拠がそこまで大きな物であるという訳ではないです。

しかし、そうだとするとこの内部構造には、

大きな危険性が伴っている可能性がありますね」


ライトとの会話に置いて兵士はどこか楽しげでもあり、

不安でもあった。

それは単に内容だけがそうさせるのではない、

ライトの口調に秘められた何かがそうさせるのであった。

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