第四百十話 九尾が名乗る時

「ほう、お前は私達の世界とは違う場所から来た存在なのだな」


困惑している青を更に困惑させるかのようにどこかから声が響いてくる。

その声に対し青は


「一体何者なの?あなたは何をしようとしているの?」


と問いかけるがその声の主は


「矢継ぎ早な質問だな、一つ一つ答えてやろう。

だがその為には対面する必要があるな、少し私に合わせてもらうぞ」


と告げる。


「合わせるって、一体何を……」


青がそういいかけた次の瞬間、その意識は遠のき、

その体は銃を構えたまま動かなくなる。


「つっ、一体何が……」


意識を取り戻した青は周囲を見渡すが、

そこは明らかに先程の部屋とは異なっていた。

一面が無色で何も見えない無色の世界、

まるで画用紙に包まれているかのような印象だ。


「ふふ、これは私とそなたの対話のための場所だ」


再び声が聞こえたかと思うと青の目の前に光が集まりだし、

それは先程まで対峙していた九尾の姿となる。


「あなたは……一体……」


青はそういいながら銃を構えようとするがその九尾は


「質問しながら銃を構えるとは、兵士としての警戒心は正解だな。

だがそれは返答を聞く態度ではないだろう」


と青を諭すように告げてくる。

その口調はどこか余裕があるようにも思える。


「……いいでしょう、こちらの質問に答えてもらうほうが先だわ」


納得したわけでも信用したわけでも無いが、

この場は九尾に従っておいた方が状況が理解しやすいと思った青は

銃に手をかけつつもその先は下ろす。


「あくまで警戒は解かないか、別世界の兵士も侮れんな。

では質問に答えさせていただこう、まず私の名前はルル。

ルル・マスカレードという」

「ルル・マスカレード、それがあなたの名前なのね」

「名前を教えればそう呼ぶのか、礼節はわかっているようだな」


九尾が自らの名前を語り、青がその名前を呼ぶと

ルルはすかさず感心した様子を見せる。


「さて、私が何者かについてだが、

それについてはピープルの英雄というのが答えになる。

最も、昔の話だがな」

「昔の話って、どういう事なの?」

「何も不可思議な事はないだろう、

寿命というのは万物に平等、すでに世界に肉体が無いという事だ。

最も、そなた達は例外の様じゃが」

「この九尾、さっきの一瞬で私達の事を?」


ピープルの英雄という言葉を聞き、青は警戒心を更に強める。

だが一方でこの九尾がすでに肉体を失っている事は、

その口調から考えても明らかであった。


「そう、肉体が無いが故に活動できん。

だがそれは肉体を得る事が出来れば活動する事が出来るという事でもある」


次にルルが発した言葉は青に何かを気付かせる。

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