第四百話 扉が出現する時

~明帝達が突入する少し前~


「あの兵士達、明らかに持ち場を大きく離れているわね。

やはり何かを目論んでいるの?」


明帝達が司令室で姿を確認した青は、

持ち場を離れてどこかに移動している兵士を追跡して、

この扉のある場所から少し離れた場所に待機していた。


兵士達は辺りを見渡しており、

周囲を確認しているのは明白であった。

見つかるのを避けるために青はその場で一旦立ち止まり、

近くにあった壁の後ろにそっと身を潜める。


「やたらと周囲を気にするあの様子、

それに少数での行動、作戦としてはよくある事。

だけどそれは他に遂行中の作戦がない場合の話だから、

今それを行うのは明らかにおかしい」


物陰から兵士の動向に気を配りつつ、

青は自分に言い聞かせるようにこう呟いていた。

するとその呟きを遮るかのように

兵士達が何かを話し始める。


「兵士達、何かを話しているわね。

一体何を?

そうだ、遠隔の集音機で」


青はそう呟くと手元から小さな機械を取り出し、

そのまま兵士達の方へと向ける。

するとその機械から


「作戦の方は大丈夫なのか?」

「ああ、正面切っての突入作戦だし協力者もいる。

向こうの作戦は失敗の要素はないだろう」


という声が聞こえてくる。

その声が兵士のものであるのは明らかであった。


「しかし、一方で俺達にはこの様な任務が課せられるとはな」

「仕方ないだろう、協力者の戦力は正面切っての突入作戦に回す必要がある。

それにこちらの作戦にも協力してくれるとは限らない」

「まあな、はっきり言って眉唾ものだし、

それに協力者が俺達の伝説を信じてくれるとは思えねえ。

いや、正直言えば俺だってまだ信じてはいないけどよ」

「それを確かめる為にもこの作戦を成功させる必要があるんだ」


集音器から聞こえる声は更に続いていく。

それを聞いた青は


「どうやらピープルのスパイというわけではないみたいね」


とひとまず胸を撫で下ろす。

しかしその直後に


「だけど私達に極秘で遂行する必要がある裏任務とは一体何なの?

それにあの言動から考えるとどうやら何か重要な物、

だけど彼等にはその詳細が知らされていないものが有るようだけど……」


と行動の不可解さを改めて考察する。


「おしゃべりは此処までだ、行くぞ!!」


兵士の一人はそう告げると近くの壁に手をかざす。

すると壁の近くから扉が出現し、兵士達はその中に入っていく。

その人数は4人ほどであり、その作戦が少数精鋭で行われていることが伺える。


「あんな所に隠し扉が?あの億になにかあるのね」


それを確認した青も後を追って扉の中に突入していく。

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