第三百七十九話 もう一つの作戦を聞く時

一方本部へと帰還した高御達は今回の一件で新たな獣人が出てきた事について

会話を行っていた。

その口火を切ったのは


「此方の世界に新たな獣人が出てきたという事は恐らく……」


という七宝の発言であった。


「ああ、セリアンとスロープの世界でも既に、

或いは今後出現する可能性は高いだろうね」


高御がこう告げるとその場に居た全員の顔付きが一瞬で険しいものになる。


「ええ、早く向こうの面々に伝えたいのですが、

まだデータが集まっていません。

現状で伝えても戦闘記録だけでしょう」

「それが伝わる事が無意味とは言いませんが

現状で送っても対策を直ぐには立てられないでしょう」

「ああ、だから神楽、七宝、君達は急いで獣人の解析を」

「了解、ではすぐに取り掛かります」


七宝の呼びかけに反応したエリーと高御が返答し、

高御が調査を命じると二人は早々に獣人を拘束している場所へと向かう。


それを見届けたミスティは

「果たして彼らのデータ解析が間に合うのか……いえ、間に合うと信じましょう」

と呟く。


「ああ、向こうに行ったチームの皆にもね」


そう呟くと一同は部屋の中にある今は何も映っていないモニターに目をやる。


(此処で時間は作戦開始時に戻ります)


転移通路をくぐり、セリアンとスロープを先頭に彼らの世界に向かった

面々はそこに居た長老に近付いていく。


「おお、二人共よく戻ってきてくれた。

それに向こうの世界の皆さんも……」

「ええ、ですが今は再会を喜んでいる時間はありません。

早々に作戦を開始しなければ」

「はい、直ぐに通信を繋ぎ、此方に繋がる通路を開くように伝えます」


長老はセリアンとスロープを見て嬉しそうな表情になるものの、

直後にかけられたパウの言葉に直様表情を戻し

今回の作戦を指揮する司令官へと通信をつなぐ。


「おお、そちらから通信が繋がったという事は……」

「ああ、作戦の開始準備が出来たのだ。

だから早く此方に通路を開いて欲しい」

「ええ、少しお待ちいただけますか?」


相手側の司令官に通信が繋がった後、数秒後には

一同がいる部屋に妖術通路が出現する。


「コレをくぐれば良いのですね?」

「はい、作戦の詳細について説明します」


通信が繋がったままになっていた司令官に確認すると

一同はその通路をくぐり抜けていく。

そして通路から外に出るとそこは今まで居た建物とは明らかに違う

機械も少ない、何処か貧相とも言える空間であった。


「皆さん、よくぞ来て頂けました」


通路を抜けた一同に対して話しかけてきたのは

魚の鱗の様な皮膚を持つ生命であった。

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