第三百六十九話 司令官について聞く時

「その転移通路、当てになるのか?」

「相変わらず警戒心が強いですね、

しかし此方の術も向上しています。

その辺りは問題ございません」


しかし長老は何処か険しい顔を崩していない。

その表情から依頼者に対して疑いを抱いているのは明らかであった。


「いずれにせよ我々の一存では決められん。

我々と彼等は協力者であって上下の関係ではないのでな」

「そうですか、しかしお話はしていただけるのでしょう?」

「良い返答が出来るという確証はないが、話してはみよう」


こう告げた長老の声の直後に通信は終わる。


「此方が今回の作戦依頼となります」


長老はこう話してくるが、その口振りは明らかに重い。


「なあ長老、今の奴って……」

「明らかにあの……ですよね……」


その姿を見たセリアンとスロープも眉間に皺を寄せ、

目が節目になっており、明らかに不安げであった。


「君達までそう告げると言う事は、

やはりあの司令官は曰く付きなの?」


その表情を見てエリーは

三人に依頼者の事を問いかける。


「ええ、ピープルと内通している等ではないのですが……」


長老がやや極端とも言える返答から否定してきた事でパウが


「それ以外のところでは問題がある?」

「ええ、根拠のない自信家と言うか……

彼等の部隊は技術には定評があるのですが、

妖術面では不安が……」

「その口調から考えると不安というより

全く信用がないといった印象ですが?」


と切り込むと長老は少しでも弁護しようとしているのか

何処か歯切れの悪い返答をしてくる。

だがその返答は更にパウに不安感を抱かせたのか

更に突っ込んだ問いかけを行う。


「はい、皆さんには正直にお話します」


長老の様子を見かねたのか、

セリアンが変わりにその口を開いて会話をし始める。

だがその顔はやはり前髪がある訳でも無いのに曇っており

件の司令官に不安がある事を伺わせる。


「あの司令官は何故か根拠の無い作戦を立案するのです。

それが上手くいく事もあるにはあるのですが……」

「失敗する事の方が多い?」


説明の途中でふとエリーが突っ込むと

セリアンは黙って首を縦に振って頷く。


「故に周囲からの信頼も薄く、

司令官に向いている性格とはとても言えないんです。

最も他に人材も居ないのですが……」


此処まで言うとセリアンはそのまま顔を下に向ける。

その様子は司令官の件で悩ませているのか、

それとも作戦についてなのか、他にも様々な理由が考えられた。


「それで、此方がその作戦に協力するか否かと言う話でしたね」


そんなセリアンを見かねたのか、高御は早急に話を進める。

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