第三百六十八話 通信が再生される時

「と言う事は次の作戦の準備が整ったと言う訳ですか?」


真剣な表情を崩さないまま神楽が長老に問いかけると


「ええ、前回奪還した施設の防衛が進んできた事もあり、

そろそろ次の段階に進めていこうと思っていた矢先に

西方面の面々が連絡をしてきたのです」


と長老に対して告げる。


「その連絡の内容は?」

「そレについてはそちらから提供して頂いた機器を用いて

録画しておきました。

少し時間がかかりますがお聞き頂けますか?」


神楽から質問を受けた長老がそう告げると

側近の兵士が手元に機器を持って来る。

それはESBが提供した映像記録装置であった。


そこから立体映像が浮かび上がる。

どうやらその内容を記録していたようだが、

その話を聞いていた一同の表情には若干の曇りが見えた。


「長老様、この度はそちらがピープルに対しての反攻を開始した事、

そしてそれを見事に成功させた事をお聞きいたしました。

それを聞いた事で我々も反攻作戦を開始出来ないかと考えたのです」

「挨拶は良い、早々に要件を伝えろ」

「相変わらず気が短い事で。

「ですが我々の戦力だけではやはり反攻を成功させるのは難しいのです。

その為そちらの作戦を分析させて頂いた結果、

全く未知なる戦力が含まれていたと言う報告を受けました」

「前置きは良い、つまりは此方の戦力も

そちらに提供してほしいという事なのだろう?」

「流石にお話が早いですね、その通りです。

勿論此方からも戦力は出します」

「それ以前に移動手段はどうするつもりだ?

流石に陸路で移動するつもりではないのだろう」


此処までの通信を見たミスティが


「話している相手の姿は分かりませんが、

声は今まで聞いた事ないですね。

今の声の主が次の作戦の依頼主ですか?」

「ええ、今の声の主が戦力の提供を依頼してきた

西側の部隊の総司令官です」


と長老と会話を交わし、録画に出てきた声の主が

次の作戦を依頼してきた主である事を告げる。


「では続きを再生させて頂きますね」


兵士はそう告げると通信を再生していく。

いや、どうやらミスティが会話し始めた事を受けて

映像を止めていた様だ。


「お願いするわね、いえ止めてくれて有難うと

言うべきなのかしら?」


ミスティが表情を少々変えて兵士にこう告げる。

その顔は何処か申し訳無さを感じるものの、

それ以上に真剣と一抹の不安を抱いているように見えた。


そんなミスティの顔を見つつも兵士は通信映像を再生していく。


「ええ、移動手段については此方から移動通路をそちらに開きます」


依頼主は長老に確かにこう告げていた。

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