第三百五話 契りを結ぶ時
「しかし、それと星間連合への対応を後回しにする事と何の関係が……」
側近の兵士が尚もアデルに質問するが、アデルはその質問に対し完全に呆れ返った表情を浮かべていた。
その顔は明らかに
「まだ気付かないのかな?」
と言いたげである、いや実際言いたいのだろう。
側近でなければとっくにそう言っていたと言わんばかりの雰囲気が漂っていた。
「アデル君の言いたい事は分かったよ」
「私もです」
一方その兵士とは対象的に高御と日本首相はアデルの意図を理解したと発言する。
それを聞いたアデルは
「お二方であれば確認するまでも無いと思いますが、一応現状の考えをお聞かせ頂けますか?
理解して下さっていても必ずしも同意して頂けていると言う訳では無いでしょう?」
と問いかけてくるものの、その表情から感じられる意図はこの兵士にも分かる様に説明してくれという心境が垂れ流しになっていた。
恐らく確認という回りくどい形を取る事で兵士に対して呆れを悟られない様にしたいのだろう。
その意図を感じ取ったのか高御は
「星間連合は今の所大部隊を送り込んでは来ないが、逆に此方から攻める事も出来ない。
つまり現状は膠着状態だ」
「そうやって睨み合っている間にピープルが別世界を制圧してしまったら次はこの世界が危機に晒される可能性もある。
その時は地球だけでなくマルティー本星も侵攻の対象になるかも知れない、そういう事なのでしょう?」
「だからこそ現時点で長老達に助力する事は彼等の世界だけでなく僕達の世界を守る事にも繋がる、それがアデル君の意見でしょう?」
と日本首相と共に考えを述べる。
それを聞いたアデルは
「ええ、今の時点でピープルを押し返す事が出来ればまだ逆転の機会はある筈です。
組織の首領を打ち取るとまでは行かなくともスロープ君達の世界も戦況を膠着状態に持っていく事が出来れば此方の防衛戦力を整える時間も稼げるでしょう」
と発言し、二人の考えが自分の考えと全面的に合致している事を証明する。
それを聞いた側近の兵士は
「なるほど、他の世界だけでなく私達の世界を守る事にも繋がる訳ですね」
と漸く合点がいった様子を見せる。
「では皆さん……」
「ええ、少し返答が遅くなりましたが僕達は貴方達の申し出を受け入れ、ピープルとの戦いについて助力します」
一連の話の流れを聞いていた長老が改めて遠慮がちに問いかけると高御はその申し出を受け入れ、彼等に協力する事を約束する。
「私達の世界の防衛は戦力がありますからね」
日本首相のその言葉も後押しとなった。
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