第二百八十六話 通路に飛び込む時

「皆さん!!くっ……」


叫んだ直後に立ち込めた爆風が消え去っていくが、その視界の先に高御達の姿は無かった。


「か、彼等の姿が……」

「ふん、我々を侮った連中の末路としては相応しいな」


姿が見えない事に動揺した中東地域の兵士に対しほくそ笑む星間連合の兵士はそのまま逃走を図ろうとする。


「くっ、逃がすものか!!」


逃走を図る星間連合の兵士に対して中東地域の兵士は強く足踏みをする。


「ふん、悔し紛れに足で怒りを表したか」


星間連合の兵士は余裕綽々という表情を見せる。

だがその直後、中東地域の兵士は一気に移動し星間連合の兵士に接近する。

しかもそれは一人二人ではない、その場に居た十人の兵士全員が息を合わせて同様の動作を行う。


「つっ、何っ!?」


星間連合の兵士が困惑した声を上げた直後に中東地域の兵士は


「その身柄、拘束させてもらうぞ!!」


と言って手袋越しの腕で星間連合の兵士の体の一部をそれぞれ掴む。

すると星間連合の兵士は全員意識を失ってその場に倒れ込む。


「彼等から提供して頂いた装備、初めて実践で使いましたが上手く行きましたね」

「ああ、だけど彼等は……」

「いや、これだけの機器を作るだけの技術を持っている彼等がそう簡単に倒れる訳が無い。

それに……だ、見てみろ」


兵士達が悲壮な表情を浮かべ始めるが隊長らしき兵士、町で高御に話しかけて来た兵士がそう呟くと先程まで高御達が戦っていた方を指差す。


「あれは……異形の出現していた通路が消滅している」

「と言う事は……まさか?」

「ああ、その可能性はある。

もしかするとこの戦場より危険な場所かもしれんがきっと行きて帰って戻って来るだろう、我々はその時を待ちつつ、こいつら全員の身柄を拘束するぞ」


中東地域の兵士達はその後、その場に倒れ込んだ星間連合の兵士の身柄を拘束し、その場を後にしていく。


「あの……良かったんですか?通路に飛び込んで来られて……」

「ああ、爆風を回避するよりこの方が早かったからな、それにこの通路であれば迫ってくるピープルを直接迎撃出来る」


この声を発していたのはセリアンと高御であった。

その周囲にはミスティや神楽、スロープに七宝も居た。

彼等が居る空間は周囲が紫と黒で覆われた禍々しい雰囲気が漂っている場所であった。


「まさか妖術通路の中に飛び込むとは……俺も初めてでそこまでやる度胸はねえよ」

「今は度胸試しをしている場合じゃないでしょう?今は迎撃を優先しなければ」


スロープがため息交じりの様な発言をするとミスティは今は迎撃を優先する必要があると促す。

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