第二百八話 代償を伝えられる時

「つまり、お二人だけで神楽さん達全員を合計した力を使う事が出来る。

だからあの獣人達を救う能力を創造し使用した、そういう事ですか?」


アデルがこう話を纏めると高御とミスティは黙って首を縦に振って頷く。

それはアデルの発言が事実であると言う証明に他ならなかった。


「しかし、お二人だけでそこまでの力を使えるのであれば……」

「君達がそう考えるのも分からなくはないが、それだけ代償もあるという事と体は一つしか無いと言う視点が抜け落ちているよ」

「そうでしたね……申し訳ございません」


側近の兵士が何かを言いかけるがその発言が軽口である事を察したアデルは先手を打って釘を刺す。

その釘は見事に突き刺さったのか兵士は直前までの口調とは明らかに声色を変えて謝意を述べる。


「アデル君の言う通り、この力は全く代償無しに使えるという訳ではないわ」

「ああ、神楽達も含めてだけどこの力は精神力を擦り減らしているような感覚がある。

実際使い過ぎて意識を失ったと言う事態も訓練中に何度か起こったんだ」


ミスティと高御はアデルの発言に対して返答し、その言葉通り代償がある事、それも実際に問題が起こった事を説明する。


「しかもその代償の詳細も良く分かっていない、少なくとも今直ぐに命を奪う様な物では無い様ですが」

「ええ、だけど能力の強さはその時の精神力に左右されているのではないか、現状ではそう推測している。

その裏付けとしてこれを見てほしい」


アデルが更に言葉を続けると高御はそう告げ、更に手元の機器を操作して室内の画面に映像を表示する。

そこに映し出されたのはデータの詳細であり、又今高御が言った場面を記録した者と思われる映像も映し出されていた。

写っていたのは力を発動させた直後にその場に倒れ込む神楽であり、今高御が発言した通り何らかの代償があった事が伺える。


「今の映像を見る限り、神楽さんが力を使用して疲労困憊してしまった様ですね。

しかもあの倒れ込み方はいきなりその場に倒れ込んでおり、直前までの活動からは考えにくいものです」

「うん、実際あの時は急に体から力が抜けていくような感じだった。

故に力の使いすぎには注意する必要があると感じたの」


映像を見たアデルがその感想を述べると神楽はその時を回想しながらこう告げる。

その表情は明らかに苦悶に満ちており、あまり当時の事は思い出したくないと言う印象を受ける。


「その前後で神楽に起こった異変を纏めたのがここに表示されているデータよ」


その画面を見ながら七宝はこう説明する。

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