第百七十三話 次の機会に掛ける時
「ええ、あの様な異形を生み出している以上あまりいい出会いは期待出来ませんね……」
神楽がそう呟くと他の面々は一斉に神楽の顔を見つめる。
その表情には明らかに不安に満ちており異形の驚異を改めて認識させられたからだろうか。
「だとすると次に出現した時可能な限り調べる、それが現状可能な最善の策だろうね。
次に出現した時は神楽と七宝に真っ先に現地に向かってもらうか或いは……」
高御はそう何かを言いかけるがその直後に神楽達が表情を見た事を察してその言葉を閉ざす。
然しその口調は決して何かを言い淀んだ雰囲気ではなく何処か自信や確証を持った表情を見せる。
なにか秘策があるのだろうか?
「ええ、承知しています。
次に異形が出現した時こそデータ収集の好機、その為にも各国政府への説明が必要ですね」
「それについては僕の方でやっておくよ、君達は一旦部屋に戻って休んで欲しい。
流石に異形と交戦して全く疲労していないという事は無いだろう」
神楽が次の交戦を見越した発言をすると高御は亜矢と友香の方を向いて彼等に労いの言葉をかける。
「ありがとうございます、ではお言葉に甘えてそうさせて頂きます」
友香と亜矢はそう返答するとその場から去り、そのまま部屋が集まっているエリアへと向かっていく。
恐らくは自分の部屋に戻ろうとしているのだろう。
「さて神楽、今までで異形について分かっている事は?他の世界で生み出された存在であるという事は想像に難くない話だけど、それがどんな世界なのか検討は付く?」
「残念ながら特定するまでには至っていません、只これはあくまで予測ですが……」
「それで構わない、現状での予測を教えて欲しい」
神楽に高御が問いかけると神楽は前置きをした上で
「あくまでも現状からの予測ですが、あの異形は僕達の母星やアデル君達の本星とは全く違う技術或いは魔術で生み出されている可能性があります。
そしてそれが事実であった場合、その生み出しているのは今の世界とは全く異なる世界、つまりは異世界、平行世界の可能性が極めて高いと考えられます」
と告げる。
「つまり、平行世界と僕達の世界がワープゲート、転移通路が繋がってしまった為に出現したというケースが最も考えられるという訳だね」
「ええ、まだその世界が此方に侵略戦争を仕掛けてくると言うと決まった訳ではありませんがその可能性は否定出来ないでしょう。
それに今回はワープゲートが無い所から出てきました、その事から考えると」
「恐らくはその生み出した世界も今回の一件を調査して居るんだろうね」
神楽と高御は尚も話を続ける。
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