第百四十三話 提供を決意する時

「……分かりました、今すぐという訳には参りませんが可能な限り迅速にそちらに戦力を提供致します」

「ありがとうございます、では失礼します」


首脳達の力強い言葉に気圧されたのか、少したじろいだ声で高御がこう返答すると首脳達はその力んだ顔の筋肉を少しだけ緩めて通信を切る。


「宜しいのですか?」

「ああ、あの顔は僕達が折れるまで延々と迫ってくるだろうからね。

それに仮に今回断ったとしても恐らくは同じ事を又言ってくると思う、そうなればその時間も取られてしまう」

「そういった合理的な理由だけでは無い様にも見えますが?」

「確かにそうかも知れないけど、彼等の決意は本物だと思う」


明帝が疑問を呈すると高御はその理由を述べるが、それだけではないと思ったのかアデルの側近の兵士も同じ様に疑問を呈する。

だがそれに関して返答したのは高御ではなくアデルであった。


「皇子、何故そう言い切れるのです?」

「彼等の口調、似ていたんだよ」

「似ているとは一体誰に?」

「他ならない僕達だよ、いや、正確に言えばマルティー本星を脱出する時の僕達にだね」


アデルが返答した事で更に疑問が深まったのか兵士はそれを掘り下げようとする、しかしアデルはその掘り下げた質問に対し少し前の自分達を重ねてみた事を告げる。

それを聴いた兵士は


「確かに……そう言われればそうですね。

彼等の顔はこの事態を何とかしたいという強い決意に満ち溢れている様に見えました」


とアデルの返答に同意する。


「さて、地球の皆さんも戦う意志を固めた以上、僕達もじっとしている訳には行かない」

「皇子?一体何をするおつもりで?」

「僕達も僕達の戦いをするつもりだよ。

以前から開発を進めていた個人用の新武装、そしてマルティー本星で僕達が使用している個人用の警護武装、あれを量産する準備を進めておいて」

「皇子も武装を提供するおつもりなのですか?」

「ああ、地球側にマルティーの技術を提供する意味も込めてね。

元々あの追撃部隊が僕達を狙っている以上、今回の一件の責任の少なくとも一端は僕達にもある」


アデルがその具体的な内容を説明するが、その説明は兵士よりも寧ろその場にいる高御達に対して行われている様にも聞こえる。


「貴方達の行動に口を差し挟める立場ではないけど構わないの?今の地球でマルティー人である事が表沙汰になれば市民からの怒りを一手に受けることになるかもしれないわよ」

「先程も告げた通り、責任の一端は僕達にあります。

ですからそれも含めて引き受けます」


エリーの発言に対しての返答も又それを裏付けていた。

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