第九十四話 今は力を蓄える時

「大丈夫だよ、僕達の力を使えば直ぐにでも組み込む事が出来るよ」


アデルの疑問に対し即答したのは神楽であった、周囲の面々も即座に首を縦に振って同意しており、彼等に少なくとも何らかの根拠、自信があるのは確かである。


「これを使えば兵器の技術、性能を向上させるだけじゃなく、地球上の文化を更に発展させる事も可能だと思うよ。

最も、そっちは追々やって行くという事になりそうだけどね」


神楽が更にこう言葉を続けるとアデルは


「地球……そう言えば地球の方はどうなっているのですか?現状星間連合が侵攻してきている訳では無いとは言え今のまま放置しておくのは危険なのではないでしょうか?」


と更に質問をしてくる。

それに対して高御は


「ああ、それに関しても追々対応をしていくつもりではあるよ、只現状地球側に戦力を提供しても直ぐに実践に投入出来る様になるとは思えない。

そっちについては訓練用のプログラムを制作し、それに準拠した形で扱える人物を育てていく事で対応していくしか無いと思う」


と少し不安げな口調で話す。

恐らくはこの点が最大の懸念材料になると考えているのだろう。


「直ぐに戦力を整えたい部分もあるけど育成という点で焦ると大抵禄でも無い事になるからね。

その体制が整うまでは私達を中心に防衛線を構築しておくしか無いわ」


ミスティも全面的に同意しており、今後の当面の課題は防衛戦力を整える事、特に兵器を扱える人物を育成する事であるという認識の様だ。


「そこに関しては地球と連携しながらやっていくしか無い。

一方で僕達の方も独自に戦力を増強させていく必要がある、そうしないと地球に対する説得力が無くなるからね」


高御がそう告げるとアデル以外のその場に居た全員が納得する。

だがその直後に明帝が


「しかし、そうなると当然まずは人数の確保が最優先事項となります。

それについてはやはり……」


と少し力無い言葉で話す。

明帝の言葉の力の無さに心当たりがあるのか高御は


「ああ、彼等にやってもらうしか無い。

正直不本意な部分もあるけど彼等は自分の意志で僕達に協力してくれている。

なら兵器のパイロットになってくれるかも知れない。

勿論それを強制したりはしないけど」


と少し低い声で話しながらも何処か強い意志を感じさせる返答をした。


「そちらについては何か当てがあると言う訳でしょうか?まあ、貴方達にも色々と事情があるでしょうからそこに関しては僕達は干渉はしませんが、それよりも……」


その場の空気を変えたのはこう言ったアデルの発言であった。

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