第八十一話 皇子が動き出す時

そこに誰かが入ってきて


「皇子、こんな時間に何を?」


と先程の声の主に話しかける。

王子と呼ばれた存在は


「ああ、此方にとっては朗報かもしれない情報が入ってきた、どうやら奴等が送り込んだ部隊が現地の部隊に返り討ちにあったと言う事らしい」


と話しかけてきた存在に対して返答し、それを聞いた話しかけた存在は


「何と……それは本当ですか?」


と信じられないという印象の言葉を返す。

それに対し皇子は


「ああ、確かに簡単には信じられないだろうね。

だけど奴等の上層部がそう話していたのを此方側の偵察員が聞いていたんだ、その情報が仮に嘘であったとするなら何故そんな情報が流れているのかが分からない」


と返答し、それに対して話しかけた存在は


「確かに、現状奴等の本拠地内でその様な話が出てくるメリットは何もありませんからな」


と話し、取り敢えず納得したと言った印象の会話を終える。

だがその直後に


「しかし、仮にそうであるとすればその現地には奴等の侵攻部隊を退ける程の存在が居ると言う事になります」


と話す声が明らかに低い声だった事からその事について喜んでばかりも居られないと言った印象を持っている様だ。


「ああ、もしその存在が万が一此方側に侵攻してきたり、或いは奴等がそれを上回ったりすれば大変な脅威になる。

だから何としても奴等より先にその部隊に接触する必要がある」


こう返答した皇子の声も又低い物になっていた。


「しかし、そうであるとすれば我々が取るべき行動は……」

「現状この機会を逃さない為に取れるであろう行動は一つだけだ、それが何なのかは……」

「ええ、しかしそれには大きなリスクを伴います。

増してそれで皇子を失う様な事があれば……」

「それだけ見返りも大きいって事だよ、此処で惜しんでいては機会を物にする事など出来ない」

「……分かりました、どうかお気をつけて」


話しかけた存在はそう告げるとその部屋を後にし、それを確認した皇子と呼ばれた存在は部屋の窓らしき場所を閉めるとそのまま何かの支度を始める。

何処かへ出かけるつもりなのだろうか?だがその雰囲気から楽しくピクニックに行くような雰囲気ではないのは明らかであった。

そのまま時間は流れ、翌日朝になるととある会場のような場所に高御の姿があった。

否高御だけではない、ミスティやエリー達の姿も見える。

だが今回はそれだけではない、他にも大勢の人物の姿がその会場には見られた。

その中には大人と呼べるような体格の人物はおらず、全員が子供であるようにも見える。

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