第七十七話 破滅を見る時

「出来る事なら彼等の手に血を付けたくはない、だけど一方でそれが彼等の意思であればそれは尊重しなければならない。

ジレンマだね……」

「だけどそれすらも超えていかなければならない、その点は決して忘れないでいかないと」


高御とミスティがそう告げるが、普段とは逆に高御が少し自信なさげな言葉を呟いた所をミスティが諭していた。

それだけデリケートな問題なのだろう。


「彼等の機体も調整が終わりつつあります、本人の希望があれば直ぐにでも戦場に出る事になります」


高御の声に釣られたのか、明らかに何時もより低い声で神楽がこう呟く。

そんな神楽に対しパウは


「そうなのね……それよりも先に私達の機体についてはどうなってるの?

貴方や七宝、エリーだけに何時までも任せておく訳にはいかないとは思っているのよ」


と神楽の心配に共感しつつも一方で何処か焦りを伝えている様子を見せる。


「分かっているよ、君達の機体も明日には動かせる様になる。

だからそれまでに兵士と兵器の情報を入手しておかないとね」


神楽がこう返答すると一同の顔は少し前向きな表情になる、恐らくはパウ達の機体が動くと言う事について希望を見出しているのだろう。


「皆、僕達が見たあの光景……あんな物を絶対に事実にしてはいけない」

「ええ、あれを忘れる事など出来ません」


そう告げると一同は一斉に目を瞑り、何かを回想し始める。

その瞬間は彼等が高御、ミスティと出会い謎の力を授かった時であった瞬間であった。


「あの時、僕達の中に謎の力が入り込んできた、だけどそれと同時に奇妙な光景もその目に映り込んで来た」

「その光景は地球が……否、様々な世界が荒廃し破滅への道を歩んでいる、そう思わせる様な光景だった」

「それだけを見せられれば単なる映画の世界の出来事であると思ったかもしれない、だけどあの光景はそうじゃなく現実だ、そう思わせる何かがあった」

「まあ、そもそも私達が使っている詳細不明の力なんて見せられた時点で何かあるって思わない方が無理があるものね」

「ええ、だからこそ私達はこの謎の現象を調べると同時に僕達の計画を進め始めた。

一つはこの未来の回避、そしてもう一つは……」

「今回の交渉もその計画の一部、僕達との交渉を応じてくれたのは嬉しい話だよ」


そして一同が口々に感想を述べ、その顔には新たな決意を秘め始める。


「その過程で外宇宙生命体の存在も知った、そしてその中の一部が実際に悪意を持っていると言う事も」


どうやらその時の経験から今回の行動を起こしたという事の様だ。

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