第二十八話 話が終わる時

「それだけではありません……もし日本が既に協力しているのであれば他の光の壁の先にある国も……」

「既にマルティー人の反逆者側に併合されている可能性が高い……だとしたら例え奥に行く事が出来たとしても……」


神楽の母が口にした不安、それはただ単に国と断絶されているというだけではなかった。

その奥が既に敵となっているかも知れない、そう考えざるを得ない状況によるものであった。


「兎に角、敵の次の動きが分からない、見えない以上ここで話だけしていても仕方ありません。

今日の所は一旦休んで今後の作戦を練り直しましょう」


マルティー人の代表者はこう告げるが、それに対し神楽の父は


「しかし、それでは今回の一件で犠牲になった……」


と言っているがマルティー人の代表者は


「その点は大丈夫です。

我が方の兵器には短距離の瞬間移動機能が備わっていますので戦死者は今回の戦闘では出ていません」


と答えるがそれに対し


「それはせめてもの救いですね……」


と大黒という女性が呟いた事で


「何が救いだ!!そもそもあんたがあんな行動をするから!!」


と他の同行者から一斉に怒号が上がる。

それに対し大黒は


「も、申し訳ございません……」


とただ頭を下げるのみであった。


「そもそも何故あの様な行動を行ったのですか?全く持って理解が出来ません」


同行者からさらなる怒号ともそうでない質問とも取れる発言が聞こえてくると大黒は


「それが……私にも良く分からないのです。

突然内心から怒りが湧き上がってくる様な感じで……自分で自分が抑えられなくなって……」


大黒はこう告げると言葉に詰まっている様子を見せる。

だがそれは言い訳という印象ではない、本当に自分が何故その様な行動をしたのかが分かっていないという様子だ。


「マルティー人代表者さん、もしマルティー人の技術でそんな風に人を操作する技術を持っていたりはするのですか?」

「いいえ、我々が把握している限りではその様な技術は存在していないと思います。

思いますが……もし独自に開発していたとしたら考えられなくは無いですね」


神楽の父がマルティー人に質問するとマルティー人からはこの様な返答を行う。

その声を聞いた大黒は


「その技術に……私が操作された!?」


と困惑した声を上げ、その表情も困惑しているのが明白であった。


「もしそうだとしたら……今後私達も、それに他の……」

「これ以上その話をしても仕方ありません、一旦休みましょう」


マルティー人の代表者が話を打ち切り、一同はその場から解散していく。

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