第二十七話 悲劇から逃走する時

「まあ、その言い分にも一理あるね。

それにその方が今後外側の世界を調査する上でもやりやすいかも知れない、神楽、今回の交戦の映像記録はある?」


高御がそう問いかけると神楽は


「ええ、バッチリです。

何方から先に攻撃を仕掛けたのかや此方側がどの様な交戦をしたのかもバッチリ記録されていますよ。

只、守護転輪の部隊の方々の映像なので流石に彼等の許可無く勝手に流すのは問題でしょうね」


と返答する。

その直後に明帝が


「まあ、その辺りは擦り合せだね。

提案しているのが彼等なのだから反対意見は多くは出ないだろうけど、ゼロとは限らないからね」


と言葉を続けるとミスティは


「ええ、だったらこの映像を日本政府に贈り、彼等に此方の考えを話した上で今後の協力を仰ぎましょう」


と話す。


「じゃ、ここからは僕がやっておくから皆、特に神楽は休んでよ。出向の疲れもあるだろうし」


高御がそう告げると一同は解散しその場から何処かへと向かっていく。

そして通路にある扉を開けるとそこにはかなり大きな広い部屋であった。

その隅々には整頓された書籍や機器が存在しており、そこが神楽の自室である事を想像するのには十分であった。


「それにしてもこの衣装を着てほしいと頼んできていたのはこういう意図が会ったとはね……熟恐ろしくも頼もしい存在だよ」


部屋に入った神楽はふと笑みを浮かべながら近くにあった椅子に腰掛ける。

一方今回の一件で損害を被ったマルティー人とサミット参加者は已むを得ずアメリカに戻り、今後について対策を話し合っていた。


「漸く日本に戻れると思った、そして件の誘拐事件の謎も解けると思ったのに……」


今回の一件にサミット参加者は落胆と悲愴を隠しきれない様子だ。

だが悲壮感を漂わせているのは同行した面々だけではない。


「俺達の国や地域もどうなってるのか分からねえ……もしあの紫の光を解除出来たとしてもその中がどうなっているのか……」


他のサミット参加者も一様に落胆と不安の表情を見せている。


「申し訳ございませんでした……まさかあそこまで既に侵食されているとは……」

「それに日本政府が協力している様な口振りであったのも気になります。

守護転輪と言う部隊が存在しているなんて聞いた事がありませんし、もし本当に日本政府が協力しているのなら……」

「既に日本国そのものが我々の敵となっているかも知れないと言う事か……」


神楽の両親も今回の一件に不安を隠しきれず、更に現場を見た存在として日本政府の動向も不安に思っている様だ。

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