第十五話 招かれる時

しかし、会談を行うと言っているものの一向にマルティー人が訪れる気配は無い。


「始まらないわね……一体どうなっているの?既に十五分近く経っているけど……」


神楽の母の脳裏に再び不安が過ぎろうとしたその時、会見場の近く、画面越しでも部屋の窓から見える場所に突如としてヘリコプターの様な物が出現し、その一部が開き始める。


「あれは……何?」

「見た所乗り物の様ですが……あれに乗れということなのでしょうか?」


神楽の母が困惑した様子を見せる隣で男性スタッフもそこまでではないが困惑した声を上げる。

その直後に代表者と中継者が移動を開始し、出現した物に乗り込んでいく所を見るとどうやら男性スタッフの言う通り、それに乗って来いという事の様だ。


「乗り物の中も画像が映し出されているな……中継を認めているという事か」


神楽の父が指摘している通り、乗り物の中も映し出されていた。

その中は当然ではあるが見た事も聞いた事も無い機器で埋め尽くされておりそれが異星人の所有物であるという事、異星人が来訪してきたという事を改めて実感させられる。

そして乗り込み終わるとその乗り物の扉は閉まり、移動を開始する。

その乗り物には窓が備え付けられており、そこから地上が映し出されるがそれが凄まじい速さで小さくなっていく街を映し出している事も又その技術の高さを伺わせる。

それからものの数十秒で窓の外にさらなる機器が映し出され、そこが連合ビル上空に出現した巨大戦艦の中である事を伺わせる光景が目に飛び込んでくる。


「これは……あの戦艦の中?そこからでも映像が中継出来るのか?」

「出来る……というよりもさせてくれているのかもしれませんね。

あの高さまで電波が届いているとは思えませんから」


神楽の父がふと口にした疑問に対し男性スタッフは一応の回答を用意するものの、その内心ではスタッフ自身も疑問を隠しきれていない事が伺える。


「それはそうとして……だ、会談を行うというのに態々自分達の方に呼び寄せるとは……マルティー人の感覚は一体どうなっているんだ?」


神楽の父が更に疑問を口にすると男性スタッフは


「マルティー人側にも風雲急を告げる事情があるのではないでしょうか?そしてだからこそここに来た。

その事情への対処として」


と返答し、それに対して神楽の父は


「となるとこの会談、此方だけがメリットを得ようという考えは甘いだろうな。

当然向こうも何かしらの見返りを要求してくるだろう」


と深読みとも的確とも取れる推測を口にする。

会談が始まったのはその直後の事であった。

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