第三話 失われる時
それから一週間が過ぎようとした時、神楽が居住していた地域は大きな騒動が巻き起こっていた。
無論、その騒動の種は神楽の消息が不明となった事である。
「神楽が消息不明になってから既に一週間……何一つ手掛かりが無いとは……」
「あの子、一体何処に行ったのよ!!何の連絡も無しに!!」
神楽が消息を経った公園近くでこう大声で叫んでいるのは男性と女性であった。
何方も外見から中年程度の年齢と思われ、神楽の捜索にあたっているようだ。
「お父さんお母さん、神楽君の手掛かりは申し訳ありませんが未だ掴めていません。
せめて私物の一つでも落ちていればまだ捜索のしようもあるのですが……」
近くに居た別の人物がその男女に話しかける。
言葉の内容から男女は神楽の両親であり、その別の人物は服装から見ると警察官のようだ。
「神楽が居ないと矛先があの子に向いてしまう!!只でさえ厄災が多くなってきているのだからあの子にまで危害が及ぶというのは……」
「それは分かりますが、このままでは幾ら捜索していても埒が明きません。
それに今回の神楽君の様な事象はここだけでは無いのです」
女性は焦燥感を醸し出しながらこう発言するが、その口調は純粋に神楽を心配しているという様子ではなく、何処か腹に一物を隠しているようにも思える。
一方父親である男性は
「ここだけではないというのはどういう事ですか?」
と警察官に問いかける。
男性は女性程は動揺していないように見える。
「実はこの一週間の間に神楽君と同様、ある日突然消息不明になる子供達が全国各地で相次いで報告されているんです。
それも何の手掛かりも無しに」
そんな男性に対し、警察官はこう告げる。
「つまり、神楽の例を皮切りに日本中で同様の事案が起こっていると?」
「神楽君が皮切りかどうかは分かりませんが、少なくともそうした事案が発生している事は事実です。
故に我々としても何としても神楽君のケースで今後の手掛かりを掴みたいのです」
男性と警察官がこう会話する。
この警察官の言う通り、この一週間で子供が行方不明になる事件は相次いでいた。
しかもそれらは決まって最後に紫の光が出現していた。
幾つかの事案で監視カメラの映像が存在しており、それらに映し出されていたのだ。
だがそこに連れ去った犯人の姿は無かった。
いや、正確に言えば一件だけそれらしき画像が存在していたのだが。
そこには巫女の装束衣装を身に纏った何者かが映っていた。
その衣装から少女と思われるがそれでもまだ断定は出来ない。
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