恋なんて

あの感情が恋だと気付くのに半年はかかったと思う。中学2年生の私は好きな人もいなかった。あの人ととの初めての会話も

「あ、これ」「ああ、うん」

なんて名前も知らないままの会話だった。



中学3年生になって教室の場所が運動場に面した所になった、7月に入り席替えをした時、窓側の席になった。特等席だ。体育が大好きな私は他のクラスの体育の授業をいつも見ていた。


そんな日々が始まってすぐ、私の前の席の男の子が窓から元気に手を振った。


そして笑顔で手を振り返す人。


「あの人だ」


気付けば心の声が漏れていた。その瞬間カーテンが閉められた。英語の授業中だ。

「手振ってる場合じゃありません」

前の子が怒られていた。


私の頭の中ではつい先程の映像が繰り返し再生されている。初めて見た顔だ。あの日の顔、廊下ですれ違う時の顔、帰り道で見かけた顔、まるで別人だ。

体操着に身を包んだ小麦色の肌。手を挙げた時の腕の筋。短パンから見えるふくらはぎの筋肉。そしてあの笑顔。何もかもが頭から離れなかった。


授業が終わってすぐ話したこともなかった前の子にその人のことを聞いた。


「ねえ、あの人、さっきの手振ってた人って誰?なんて名前?」


驚きながらも質問に答えてくれた前の子。

「たかや しょう?のこと?」



あの日部活をサボってまで美奈と話し込んた。美奈があの人と同じ小学校出身だった。今となっては何を聞いたのかも忘れてしまったけれど、美奈が帰り際にニヤついて放った

「すきなの?」

はハッキリと覚えている。


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