腐れ縁

 さて。授業が終わって、放課後のことである。


 エリザとの約束を果たすために俺は、学園にある地下通路を訪れていた。



「不思議。ウチの学園にこんな場所があったなんて……」



 少し薄暗い地下通路をエリザと2人で歩く。


 おっと。

 たしかこの辺りだったな。


 俺はポケットの中からノエルから貰った鍵石を取り出すと、途中に置かれていた石像の前に立つ。



「ねえ。アベル。何をしているの?」


「説明は不要だ。見ていれば分かるだろう」



 俺が石像の顔に鍵石をハメ込んだ次の瞬間。


 ガチャリッ!


 壁の奥からロックが解除される音が鳴り、隠されていた扉が開く。



「えっ。もしかしてこの先にあるのが……?」


「ああ。昨日話をした古代魔術研究会の研究室になる」


「…………」



 釈然としない表情を浮かべるエリザ。


 まあ、気持ちは分かる。

 古代魔術研究会は俺にとっても未だに謎の多い存在だからな。

 

 この研究室を初めて見た時は、不安な感情を抱くのも致し方のないことだろう。



「アベル……! ずっと待ってた……」



 やれやれ。

 今日も今日とて、この研究室の主は健在のようだ。


 俺の存在に気付いたノエルは、トコトコと足音を立てて近づいてくる。



「「ゲッ」」



 んん? これは一体どういうことだろう?

 互いに目が合ったエリザ&ノエルは、互いに口を開いたまま気まずそうな表情を浮かべていた。



「もしかして2人は知り合いだったのか?」


「知り合いというかなんというか……。親同士が昔馴染みっていうだけで……」


「単なる腐れ縁……」



 そうか。今にして思うと、2人の先祖はそれぞれ『火の勇者』と『水の勇者』だったんだよな。


 それにしても奇妙な巡り合わせである。

 

 まさか200年前の時代の仲間の子孫が、時を同じくして学園に通っていたとな。



「エリザ。どうしてここに?」


「そっちこそ。どうして貴方がアベルのことを知っているのよ!?」



 はあ。これは少し面倒なことになったかもしれない。

 溜息を吐いた俺は、ひとまず2人に事のあらましを説明することにした。



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