サークル代表
「エリちゃん。来てくれたんだね。嬉しいな」
そこで俺たちに近づいてきたのは、先程、部の代表者として説明をしていた金髪の男であった。
ふうむ。
近くで見ると益々と香水の臭いがキツイ男だな。
おそらくロクに体力トレーニングを積んでいないのだろう。
パッと見では細身な体つきをしているようにも見えるが、よくよく見ると余分な脂肪が腹回りに溜まっているのが分かる。
腰に下げている剣の形をした魔道具はやたらと高価なものを使っているようだが、それ以外には特筆すべき点は見られない。
まさに現代魔術師の典型ともいえるタイプの男だな。
「はい。今日は知り合いと来たのですが」
そう言って俺の方に視線を移すエリザ。
俺の存在に気付いた研究会の代表者は、露骨に顔をしかめているようだった。
「さっそくだけどエリちゃんはボクの後ろでいい? エリちゃんのために、とびきり優秀なドラゴンを用意したんだ」
「待って下さい。今日は知り合いと来たので、こっちの彼とも一緒に乗りたいのですが」
「それはダメだよ。悪いけど、ウチのドラゴンは2人乗りなんだ。残念だけど彼には別のドラゴンに乗ってもらわないと」
「でも……」
まあ、当然と言うと当然の話だよな。
この見学会の目的は、新入生の女生徒たちをナンパすることにあるのだ。
ドラゴンライド研究会の連中からしたら俺は、邪魔な存在でしかないのだろう。
「エリザ。俺のことは気にする必要はないぞ。お前はお前で楽しんでくればいいさ」
この様子だと俺の分の竜が乗れるかも怪しいところである。
ここに来るまでの会話で分かった。
エリザは竜に乗るのが初めてで、今日のイベントを楽しみにしていたらしいからな。
ならばここはエリザが気兼ねなく楽しめるように、背中を押してやるのが筋というものだろう。
「……分かったわ」
んん? これは一体どういうことだろう。
俺としては最大限に気を遣ったつもりの発言だったのだが、エリザはというと露骨に不機嫌になっているようであった。
「大丈夫だって。エリちゃん。そっちの彼にも、しっかりとドラゴンは貸してあげるから」
はあ。相変わらずにエリザの思考回路には謎が多いな。
それからというものエリザは、俺とは目を合わせようとせずに、足取りを早くして竜舎の中に消えていくのだった。
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