ドラゴンライド研究会
それから。
退屈な授業が終わり、放課後になった。
俺はというと事前の予定通りエリザと共に学園を出て、西区画の外れにある『竜舎小屋』を訪れていた。
「うぇーい! みんなー! 今日は来てくれて、ありがとうー!」
「「「うぇーい!」」」
んん? こいつらがドラゴンライド研究会のメンバーか?
竜舎小屋の前で俺たち新入生を待ち受けていたのは、総勢15名くらいの上級生たちであった。
やけに軽薄な格好をしているのだな。
全身から強烈な香水の臭いを漂わせた上級生たちは、とてもこれから竜に乗るような格好には見えない。
俺のいた200年前の時代では、竜の世話というのは、想像を絶するほどの重労働であった。
何せ竜という生き物はよく食べて、よく動く。
その上、頭も良いため、少しでも気を抜くと隙を見て脱走を図ったりするのだ。
この軽薄そうな男たちが竜を扱えるとは到底思えないのだが、これは一体どういうことだろう。
「……ごめん。アタシ、こういう研究会だっていうことを知らなくて」
ふうむ。どうやら嫌な予感を覚えたのは俺だけではないようだな。
一緒に見学会に参加していたエリザまでもが、何やら違和感を覚えているようであった。
「あのう。質問があるのですが……」
「んんー。何かなー。可愛いお嬢さん」
「こちらのドラゴンライド研究会というのは、隣にある騎竜研究会と何が違うのでしょうか?」
見学者と思しき女生徒が尋ねると上級生の1人が声高に語り始める。
「うん。良い質問だね! 簡単に説明をするとスタンスの違いかな。ボクたちは隣の研究会と違って、あくまで楽しむことを目的としているに対しているんだよ!
だから堅苦しいことは一切なし! 竜に乗ることにかかわらず、それぞれが自由にやりたいことをエンジョイしているんだ!」
なるほど。道理で研究会全体の雰囲気が緩いと思った。
だが、驚いたな。
俺の生きた200年前の時代、竜は人間にとって欠かすことのできない貴重な『資源』でもあった。
故に、そもそも娯楽のためにだけ使うという発想はなかったのだ。
まあ、それだけ現代が豊かになったということなのだから、ここは好意的に捉えておくとしよう。
「それじゃあ、みんな! 近くにいる先輩と2人に1組になって! さっそく竜に乗るよ!」
代表の一声によって集まった生徒たちはゾロゾロと動き始める。
んん?
これは一体どういうことだろう?
こうしてペアを組んでみて初めて浮き彫りになったのだが、どうやら場に集まった見学者たちは俺以外が全員女らしい。
一方の上級生たちは男だけ。
はあ。
つまりこの見学会の目的は……そういうことなのだろうな。
あまりに情けない展開に溜息しか出ない。
いくら200年前の時を過ぎたとは言っても、ドラゴンがナンパのための道具に成り下がる時が来るとは思いも寄らなかった。
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