早朝の約束
それから翌日のこと。
早起きをして寮を出ると、校舎の前に見慣れた顔が立っていた。
「お、おはよう。アベル」
「ああ。おはよう」
んん? もしかしてこの女、朝の挨拶をするためだけに早起きをしてここに立っていたのか?
相変わらずにエリザの思考回路には謎な部分が多いな。
「ねえ。昨日の約束、覚えている?」
「ああ。ドラゴンに乗りに行くんだろ」
「うん。アタシ、昨日からずっと楽しみにしていて……。実はドラゴンに乗るのって昔からの夢だったのよね」
なるほど。何よりも『強いもの好き』のエリザらしい意見だな。
古来よりドラゴンという生物は、『力のシンボル』として人々に親しまれてきた。
そんなエリザがドラゴンに対して憧れを抱くのは、ある意味では当然のことなのかもしれない。
「それじゃあ、今日の放課後はよろしくね! アベルの分の外出届けはアタシが提出しておくから」
「了解した」
エリザと別れて別々に教室に入ると、何やら内部性の男子生徒たちの視線が一斉に集まってくるのを感じた。
「なあ。さっきの見たかよ。アレ」
「気に食わねえ。劣等眼の癖に女と仲良くしやがってよ」
ふう。前々から思っていたのだが、エリザと一緒にいると何かと注目を浴びてしまって面倒だな。
まあ、無理もないか。
同年代の女生徒たちと比べて、エリザの容姿のレベルが飛び抜けたものがある。
そんなエリザと琥珀眼の俺が親しくしていれば、思春期を生きている男子生徒たちにとっては気にくわないものがあるのだろう。
「クソッ――! オレだってよー。オレだってよー! あの、エリザさんのデカパイを触ってみたいって!」
「バカ! お前、声がでかいって! まあ、その気持ちは痛いほど分かるけどよぉ」
欲望をダダ漏れにする一部の男子生徒たち。
やれやれ。
いくら何でも品がないにも程があるぞ。男子ども。
だが、まあ今回のことでハッキリしたな。
入学した当初こそ、外部出身で、気の強い性格をしたエリザは、周囲から少し浮き気味だったのだが、男子生徒たちかの人気は日に日に高まっているようである。
もしかしたらエリザのことを狙っている男子生徒は、俺が思っている以上に多いのかもしれないな。
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