秘密図書館

「他の学生たちの姿が見えないようだが?」


「いない。この研究会に入っているのは今のところワタシ1人」



 なるほど。

 もしも先程ノエルが渡した『迷宮回路』が彼女なりの『入会試験』だったのだとしたら、他に会員がいないにも納得である。


 あの試験は俺だから難なく解くことができたのだが、一般の学生レベルでは突破が不可能だろう。


 研究室の中は狭いなりによく整理が行き届いており、なかなかに好感が持てるものだった。



「おや。この本は……?」



 何気なく棚にあった本を手に取った俺は、そこで興味深い事実に気付く。


 随分と古いな。

 発行日を見ると今から50年近く昔に発行されたものだということが分かる。


 疑問に思って調べてみると、やはりそうみたいだ。

 この本棚に置かれている本は全て今から50年以上も昔に発行されているものである。街の書店では見たことのないものばかりだった。



「一番古いものは今から100年前のものか……。これより古いものはないのか?」



 もしかしたら俺のいた200年前の時代の本が見つかるかもしれない。

 そんな期待を抱いていたのだが、次にノエルが口にした言葉によって、俺の希望は粉々に打ち砕かれることになってしまう。



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