アーミーフット
テッドに連れられて向かった先は、アースリア魔術学園の中でも取り分け多くの学生たちが行き来すると言われる『中央広場』と呼ばれる場所であった。
「ぬおー! もの凄い人だかりッスねー!」
テッドが驚くのも無理はない。
今現在。中央広場は未だかつてないほどの人数の学生たちでごった返していた。
ふうむ。
さながらこれは祭りのようだな。
年若い学生たちがそれぞれ思い思いに勧誘活動を続ける様子からは、エネルギッシュな雰囲気を感じ取ることができた。
「キミ、騎竜研究会に興味ないかい!?」
「おい! そこの新入生! オレたちのハウント研究会に入って、一緒に汗を流そうぜ!」
なるほど。
俺が思っていた以上に研究会の数は充実しているらしい。
暫く周囲を観察してみて分かったことがある。
どうやら中央広場に集まった研究会は、『火属性魔術研究会』『回復魔術研究会』などの魔術系、『騎竜研究会』『ハウント研究会』などのスポーツ系の2種類に分けられるらしい。
しかし、こう数が多いと1つ1つ見ている暇は無さそうだな。
俺は人垣を縫いながら、とりあえず空いていそうな研究会を探す。
「ねえ。キミキミ! ちょっといいかな?」
暫く歩いていると上級生と思しき学生に声を掛けられた。
「ぬおっ! な、なんなんスか! その格好! 鎧のお化けがいるッスよ!」
「ハハハ。これは試合で使う防具だよ。驚かせてしまってすまないね」
鎧のお化けか。
なるほど。言い得て妙な表現だな。
上から下まで覆う白い防具。肩や膝には盛り上がりがあることから、プロテクターが入っているのだろう。
よほど激しい試合をしているに違いないな。
スポーツと呼ぶには些か装備が過剰なような気もする。
「ボクの名前はセガール。キミ、アーミーフットに興味ない? キミほどの逸材ならレギュラー間違いなしだよ!」
セガールと名乗る男はそう言って、俺の隣にいるテッドの両肩をがっしりと掴んだ。
「アーミーフット? なんスか。それ」
「分かりやすく言うと、こういう魔導鎧を装着して行う肉弾戦を主体とした球技だね。場合によってはかなりハードな試合になるから、『地上最速の格闘技』なんて呼び方がされているんだよ」
ふうむ。今の説明で大体理解ができた。
おそらく200年前の時代で普及していたフットボールから派生した競技なのだろうな。
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