攻撃の天才
「おい。テッド。耳を貸せ」
「え! なんスか! 師匠!?」
俺はテッドに作戦の指示を送る。
試合の最中の作戦会議は当然、時間のロスが激しいのだが、後でキチンと成果を出せば反感を買うこともないだろう。
「ちょっと2人とも! 何をやっているのよ!」
仕方がない。
そろそろエリザの攻撃にも疲れが見え始めてきたし、早々に決着を付けることにするか。
「黄昏よりも暗き闇よ! 我が手元に集いて、忌まわしの鎖から力を解き放つッス!」
俺が合図を送るとテッドは大きく右手を天に突き上げて、何やら仰々しい呪文を唱え始める。
おいおい。
なんだ。その大層な前置きは?
というツッコミ所は置いておくとして、そのタイミングで、俺は高速で魔術を構築する。
使用する魔術は何の変哲もないタイプ槍の無属性魔術だ。
しかし、同一の魔術構文を複数個並べることによって、敵チームが避けられないように工夫してある。
内部生チームやったように《散連弾》の追加構文を施しておけば、遥かに楽に同じようなことができるのだが、一応それはルール違反だしな。
「降り荒ぶ嵐(ラセット・テンペスト)」
テッドが大きく腕を振り下ろしたその直後。
俺は作り上げた魔術構文に魔力を流し込んでおく。
このタイミングが肝心だ。
せっかくテッドにお膳立てをしてもらっても、俺の魔力が流れる瞬間を見られてしまっては全ての努力が水の泡である。
自分が発動した魔術を他人が使ったように見せかける《偽装魔術》は、前の時代での俺の得意技の1つであった。
「おいおい! な、なんだよアレは!?」
内部生の1人が異変に気付いて頭上を指さした時にはもう遅い。
ヒュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッ!
それは天空から降り注ぐ、無数の雨の如き槍型の術弾。
無論、1発1発はなんてことのない平凡な無属性魔術である。
だが、塵も積もれば山となる。
いくら殺傷能力のない魔術とは言っても、1000発くらい集まるとそれなりに威力が出るようになるだろう。
「うわあああああっ」「ぎゃあああああっ」「へばあああああっ」
槍型の術弾の雨は転倒した内部生たちにも容赦なく降り注ぎオーバーキル級のダメージを与えることになった。
う~ん。
これは少しやり過ぎだっただろうか?
でもまあ、こいつらの言葉を借りるなら、『転倒したラビに攻撃してはならない』というルールは存在していないらしいからな。
身体的なダメージの少ない無属性魔術を使っているわけだし、多少の痛みは我慢してもらうことにしよう。
「あばっ。ゆ、許してくれ……」
哀れにも内部生チームのリーダーは、攻撃が終わった後も白目を向いて命乞いを続けているようであった。
これは試合が終わった後も暫くトラウマになりそうだな。
ふう。
久しぶりに本気の集中力で魔術を使ったせいかドッと体に疲れが溜まっている。
世界広しとは言っても、この短時間で同一の魔術をこれだけ並べられるのは俺くらいのものだろう。
術弾が降り終わり、訓練場の中は静寂の空気に包まれていた。
俺たちの試合を観戦していた誰もが、『何が何だか分からない』と言った様子で呆然としていたようである。
「グッ……。勝者Dチーム!」
やがて静寂した空気の中、審判を務めていた体育教師が悔しそうに勝ち名乗りをする。
直後、爆弾が落ちたかのように歓声が沸き上がった。
「信じられねえ! あの『金髪』、一体何をしたんだ!?」
「おいおい。今年の外部生には『回避の天才』と『攻撃の天才』がいるみたいだぞ!」
まあ、こんなものだろう。
俺はテッドに功績を擦り付けることによって、必要以上に目立つことなく試合を終わらせることに成功するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます