ルール違反
「ヤベエぞ! このままだと仕留めきれねえ!」
「仕方ねえ! 例の、『合体攻撃』でいくぞ!」
はて。合体攻撃とは一体何のことだろうか。
などと考えていたその直後、俺の周囲を大量の術弾が覆った。
ふむ。
どうやら内部生の連中は、既存の魔術構文に《散連弾》の追加構文を施してきたらしい。
ルール違反も甚だしい。
既存の魔術構文を変更するのは、ルール違反だと事前の説明であれほど言っていただろうに。
「どうだ! この攻撃は避けられないだろう!」
先程までとは比較にならないほどの量の術弾が一気に押し寄せてくる。
なるほど。
たしかにこれだけの弾幕を張られてしまうと、攻撃を避けられるだけのスペースが見当たらない。
まあ、正確に言うと避けられないこともないのだが、そうすると今度は大勢の前で人間離れした動きを晒すことになってしまうことになり、余計な注目を集めてしまうだろう。
仕方ない。
先にルールを犯したのはお前たちだ。
「証明完了。《反証魔術》」
相手の構築した魔術を分析して、一瞬で相手の魔術を無力化する技術を《反証魔術》という。
実のところ《反証魔術》は相当な実力差がないと使えないのだが、ポンコツを絵に描いた内部生チーム相手なら問題ないだろう。
パリンッ!
ガラスが割れるような音が響いて、俺の周囲を覆っていた術弾の嵐が粉々になって砕け散る。
はて。
ところでこのハウントというスポーツで《反証魔術》を使用するのは、ルール違反になるのだろうか。
事前の説明では相手プレイヤーに干渉する魔術を使ってはいけないというルールがあったはずだが、《反証魔術》がこれに当てはまるかは微妙なところである。
「なっ! 何が起こったっ!?」
「信じられねえ! 魔道具の故障か!?」
俺が《反証魔術》を使用したのと同時にゲーム終了のブザーが鳴る。
結果的に《反証魔術》で攻撃を凌いだことは正解だったかな。
これで第三者の視点からは、慣れない追加術式を使ったことによって魔術が暴発(オーバーフロー)したようにしか見えないだろう。
「うおおおお! 流石は師匠! 世界一ッス!」
「凄いです! アベルくん! たった1人で攻撃を凌ぎ切ってしまうなんて!」
チームの連中は既に勝利したかのように喜んではいるが、まだまだ油断することはできない。
結局、外部生チームの生き残りは俺一人だった。
つまり、次の攻撃で防御側(ラビ)に回った内部生チームを全滅させないと、俺たちの敗北が確定してしまうのである。
さてさて。
どうしたものか。
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