回避の天才

 やれやれ。

 今後の学園生活のことを考えると、あまり目立ちたくはないのだけどな。


 俺としては、別に勝敗に対する拘りないし、負けてやっても良いのだが、そうすると今度は余計に内部生たちを増長させかねない。


 仕方ない。

 敵の弾丸を回避するくらいなら特別な魔術を使うわけでもないし、ここは2人の仇を取ることを優先してやるとしよう。



「オラオラ! 喰らいやがれ!」


「ハッハー! そろそろ息が上がってきているんじゃないか!?」



 全然上がってない。

 どちらかというと疲労の色が見えてきているのは、3人がかりで攻撃しているお前たちの方じゃないか?


 三方向から攻撃が来るのだから、避けるのが難しいと思うかもしれないが、実際はそんなことはない。

 

 理由は2つある。


 1つは、こいつらの攻撃がバカの1つ覚えのように単調なことである。

 

 仮にこいつらが頭を働かせて、俺の退路を断つように攻撃をしてきたのならば、少しは難易度が上がるかもしれないが、今のところは全くその気配がないな。


 そしてもう1つは、このコートだ。

 ラビが自由に動き回ることのできるエリアは縦横20メートルの範囲である。十分に広い。


 相手がコートの外から攻撃を打ってくる以上、俺は目を閉じていても攻撃を回避できるだろう。


 そういえば最近、図書館に籠ってばかりで体を動かしていなかったな。


 よくよく考えてみると、この体育の時間は運動不足の解消にはうってつけなのかもしれない。



「うおっ! 今の攻撃! 危なかったッス! 流石の師匠でも、3人が相手じゃ……」


「いいえ。ドングリ。それは違うわ」



 何かに勘づいたかのような様子でエリザは言った。



「アベルはさっきから、あの位置から一歩も動いていないのよ」



 ふう。流石にエリザは気付いたか。

 普通に避けていても簡単過ぎるし、何個か自分の行動に制限をかけていたのだ。



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