卑劣なやり方

 それから。

 冷静を取り戻した俺たちは順調に内部生チームから放たれる弾丸を避け続けた。


 それにしてもこのゲーム、ラビ側は回避しかできないのは些か退屈ではあるな。


 せめて相手の術弾を魔術で打ち落としても良いというルールであれば、もう少し張り合いが出たのかもしれないのだが。



「エリザさん。後ろから術弾が飛んできています!」


「……!? ありがと! ユカリ!」



 俺にとって少し予想外だったのは当初は弱気だった黒髪の少女が、意外な奮闘を見せていたということである。


 本人も認めるように運動能力が高いわけではないのだが、エリザ、テッドと比べて視野が広い。冷静だ。


 消極的な性格を直せばこの女、将来は有望な魔術師に化けるかもしれない。



「チッ。ラビ側の奴ら、意外と避けてくるな」


「仕方ねえ。狩れるところから狩っていくぞ」



 そんなことを考えていた直後だった。

 俺たちを取り囲んでいたシューター側の雰囲気が明らかに変わった。



「えっ!?」



 なるほど。

 敵の考えていることは分かった。


 おそらく内部生たちは身体能力に秀でた俺、エリザ、テッドに見切りを付けて、最も術弾を当てやすい黒髪の少女、ユカリの元にリソースを集中させることにしたのだろう。



「キャッ!」



 弾丸の嵐の中に晒されたユカリは堪らずに転倒してしまう。



「おらおら! ノロマは早くドケや!」



 そこで俺にとっても少しだけ予想外のことが起こった。


 何を思ったのか、内部生の一人が既に転倒したユカリに向かって術弾を打ち続けたのである。



「ちょっと! アンタたち! 何をやっているのよ!?」


「んー? 何って、見たままだぜ? 外来種(ポイズンパーチ)の駆除だよ!」



 内部生たちはその後も容赦なく、身を屈めて蹲っているユカリに向かって術弾を放ち続ける。



「最悪! ユカリはとっくに転倒しているでしょ!」


「はん。転倒したラビに攻撃してはならない、なんてルールは存在しないんだぜ?」


「だ、だからって……! やって良いことと悪いことが……。きゃうっ!?」



 相手チームに抗議をしようとして隙を見せたエリザが、背後からの術弾に強襲されて、転倒してしまう。


 ふう。エリザのやつも詰めが甘いな。

 戦闘中に感情的になりがちなのは、エリザの悪癖である。


 シューター側の視点から見ると、既に転倒しているプレイヤーを攻撃するメリットはない。


 先程の攻撃はこちらの精神を揺さぶるためのものだったのだろう。



「ちょっ! 異議ありッス! 今のはノーカンッスよ! って、うわあああああああああああああ!」



 はあ。ミイラ取りがミイラになるとは、まさにこのことである。


 エリザと同じような失態によりテッドまでもが、術弾の餌食になってしまう。


 まったくもって頼りにならない仲間たちだな。



「ハハッ! G3(ジーニアススリー)だかなんだか知らねーが、やっぱり外部生はたいしたことねーな」


「外来種は外来種らしく、大人しくドブ川に帰ったらどうなんだ?」



 結局、ゲーム開始から2分と経たないうちにコートの中に残ったのは俺1人となってしまった。


 内部生チームの嘲笑の視線が俺に向かって一斉に集まる。


 さてさて。どうしたものか。

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