手記

あぁ...息子よ、どうか許してくれ。



家族さえも放り捨て、私は一人「力」の研究に没頭していた。今思えば、実に愚直で醜く愚かな事をしていたと思う。




後悔ばかりの人生だった。

最期に、一目だけでも家族の顔が見たかったと切に思う。



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アレは本当に私たちと同じ次元の存在なのか?



瞬く間に勇者一行を壊滅させてしまった...信じられん...。巷ではあの存在のことを「メアリー・スー」と呼ぶらしい。



この世界に降り立つと同時に全ての力を授かった存在、その神のような異能を何としてでも調べなければ。



しかし私は何も持たない凡人だ。

当然力に関することなど何一つ知り得ない。なので力というモノから理解していく必要がある。




時間はある、大丈夫だ。私ならやれる。



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【武器】


・武器を生成する。または武具、道具に何かを付与することが可能なようだ。


・「魔具」と呼ばれるものは全てこの力による産物らしい。魔具は希少ながら種類が豊富なことで有名であり、貴族階級の人間がよく所持している。


→転移者の力を武具や道具に移している可能性アリ



【視線】


・自分へと向けられる視線を感じ取れる力。


・他愛もない力だと感じたが、その力を受けて初めて恐ろしさに気づいた。この力は間違いなく強大な力だ。


・視線で相手を縛り付ける、相手を視ることによって身動きを取れなくする力。拘束する時間は視る長さによって決められると考える。



【異形】


・勇者一行によって滅ぼされたとされる魔物を召喚、使役できる力。


→私が見た魔物の数は最大で六体。数は少ないが、魔物という点を考えれば十分すぎる戦力だろう。


・局所的に顕現させることも可能、使い勝手がいい。



【刃】


・体から刃を生成することが可能な力。


・一度に生成できる刃には限界があり、体中から刃を出すというのは不可能のようだ。


・体のどの部位からも刃を出すことができるものの、使い勝手が悪いようにも感じる。



【知識】


・相手に触れると、相手に関する全ての情報と相手が触れた人間の情報を知識として得ることが出来る力。また、過去全ての知識を有している力。


→前述の能力のため、ほぼ世界中に点在する人間の情報を知っていることになる。


・莫大な知識を有するため廃人になるものだと考えていたが、転移者は通常の会話が出来ていた。


→おそらく力による脳機能の拡張がなされたか?


・「過去」に関しては唯一無二の力だが、それは未来を知り得るものではない。また、世界全てを見通す力でもない。


→適宜情報を「更新」する必要があるようだ。



【呪い】


・相手を人形と見立て、意のままにすることが出来る力。


・転移者を殺すか、人形を何らかの手段で破壊すれば効力はなくなる。


・一対一の場合、まず間違いなく勝利できる絶大な力だと私は考える。



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力は流転している。

私が研究を進めていくうえで理解した世界の真実だ。



転移者が死ぬと、その力は当然消えてなくなる。


しかし、少し時が立てば新しい転移者がその力を有し



つまり、力がこの世界から消え失せるということはあり得ない。必ず巡り巡って、力は元の居場所に戻る。これを流転と言わずして何と言おうか。



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...月     にち



あぁ、私は今日...神を見た。

こんなことがあっていいのだろうか。私たちはどんなにちっぽけで、どんなに惨めな存在だったのだろうか。



ここはまさしく楽園だ。



地域によって祀る神こそ違えど、唯一絶対の存在。それをこの目で見た、頭が正常に機能するはずない。




世界の真理とは、神であった。



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【契約】


・自分と相手が交わす契約に強制力を持たす力。





この力はあってはならない。

ダメだ、消せ、消せ、抹消しろ。




『契約』を殺せ。

日の目を見るまえに、闇へと葬るのだ。



殺し続けろ





ゼッタイに。

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