調査報告書

エドガー監査官へ、例の町に関する調査結果がまとまりましたので、書面にて報告させていただきます。



【概要】

首都から離れた田舎町で町民全てが余すことなく死亡しているのが確認されました。関所などに残っている記録では総勢4591人。ですが田舎町なので放浪者たちも流れ着くでしょう、実際はもっと数が多いと思われます。



【町の状況】

ハッキリ言って不思議なぐらい何の痕跡もありませんでした。住民の家が荒らされた痕跡もなく、金目の物もしっかりと残っています。正直何が原因でこの惨事が起こったのか全く分からない状況です。



しかし、不自然な点が二か所ありました。


まずは、明らかに供養されたものと思われる死体が一体だけあった点です。

ターナー家のエレンという少女が唯一施しをされており、この町に生き残りがいた可能性が高いと思われます。


二点目は、一軒だけモノを物色したような跡があった点です。

こちらは現在も調査中ですが、現存している書類に脱字や欠損が多く、調査は難航しています。特に一家の名字が抜け落ちていて、その子供の名前に至っては記載すらされていません。



現在死体の身元確認を行っていますが、未だこの子供の死体は見つかっていません。よって私はこの子供こそが唯一の生き残り、もしくは実行犯だと考えています。



【死体の状況】

どれも外傷がなく、死因が判別できません。死体の検死を担当した担当医は「魂が体から突如として抜け落ちたみたい」と言っていました。


私たちはこの惨状を生み出したのは転移者による力だと考えています。



【推測】

『知識』の転移者に上記のことを成し得る力があるかと尋ねたところ、『契約』の力がこれに当たるのではないかとの結論に至りました。


この力は、自分と相手が交わす「契約」に強制力を持たせるものです。

契約内容のスケールが大きくなるにつれて、要求される代償も大きくなります。


したがって、今回の代償から考えると相当な内容の契約が交わされたと考えられます。



【注記】

今回の事件に関して、担当者があなたになったとの報告を受けました。

本件は極めて異例の事態及び甚大なものになっています。くれぐれもお気をつけてください。


それと、王国側は今回の事件を受けて彼らの投入を検討しているようです。

国王直属である彼らの投入に元老院は反対したようですが、宰相が半ば強引に投入を決定したと聞いています。



【さいごに】

もし仮に、本当に例の少年が実行犯だとしたら、彼は人の感性をしていないのかもしれません。




                   

調査員:リュカ・シモンズ

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