ポヤとレミ先生
いつかの時代のどこかの星。戦争で両親を失ったポヤは、焼け野原で出会った敵国の将校さん─ペペの家族として、彼の国で暮らし始めた。
心の壊れたペペは退役軍人として恩給をもらいながら神経科通いの日々を過ごすことになった。
一方でポヤは新しい環境で生活を送るにあたり文字の読み書きを習わなければならなかった。また、幼いポヤは人として最低限の教養を得るのに学校へ通わなければならなかった。しかしペペの国では、例え帰化した者であっても外国人には公共機関で教育を受ける権利が与えられなかった。つまりポヤは学校に通えないのだ。
これにペペの両親は悲しいような安心するような、複雑な気持ちになった。ポヤのような幼い子供までもが"外国人"という括りに縛りつけられて人としての権利を失うのはあまりにも可哀想だが、仮に学校に通えたところで「敵国の子供」などと呼ばれていじめられてしまうだろうと思ったからだ。
両親はポヤの家庭教師を務めてくれる人を探すことにした。
家庭教師を募集してから早3日。ペペの親友であるボンという軍人の紹介で、レミという大学院生がポヤの家庭教師を務めることになった。レミはポヤの国の文化や言語について研究しており、その為日常会話程度であればポヤの母国語を話すことができるそうだ。
このレミと初めて対面した時、ポヤは焼け野原で嫌な大人を沢山見てきた為か僅かながらもレミに対して警戒の念を抱いていた。が、それもたった1日で解消した。レミはポヤに対して懇切丁寧に指導を行い、ポヤが疑問に思うことがあれば専門外だろうとキチンと調べて答えてくれたのだ。
レミとポヤは一気に仲良くなった。
ポヤは週に3回、レミの指導の下で勉強をした。神経科の受診日で無い時はペペも授業に参加した。ただ、考える最中にペン回しをする癖があったので、よくポヤから「品が無いな」と怒られた。レミは2人の姿を見て微笑んだ。
ある日の授業後、ペペも交えて3人でお菓子を食べている最中、ポヤはレミに対しずっと訊きたかったことを訊いてみた。
「レミ先生ってボン兄ちゃんのカノジョ?」
これはレミと会った当初からポヤが思っていたことだ。当時、レミはボンに連れられて来たのだが、その時ボンがレミの肩に取り付き「レミやん頼むで〜」と親しげにしていたので、ポヤには2人が付き合っているように見えたのだ。
レミはポヤの質問に対して微笑みを浮かべたまま「よく聞かれる」と返した。
「でも違うよ、ただの友達。ボンちゃんには彼氏がいるから」
「えっ、ボン兄ちゃんって男の人でしょ?」
「同性の人を好きになる人だっているわ。人間色々だもの」
「えー…」
眉をしかめるポヤにレミは「大人になったらわかるかもよ」と言って頭を撫でた。
それからポヤは5年に渡りレミの下で勉強した。レミもポヤからの話を通じてポヤの国の文化を学び、そのお陰か大学院で博士号を取ることができた。
その後、レミは講師としての仕事が忙しくなりポヤに勉強を教えることはできなくなったが、たまに手紙を交わすようになった。ポヤの書く文は生まれながらこの国に住んでいる人とそう変わらなくなっていた。
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