ポヤの怖いもの
いつかの時代のどこかの星。戦争で両親を亡くしたポヤは、自分が勝手に"ペペ"と名付けた大男と一緒に川沿いの掘っ立て小屋で暮らしている。
ペペは心が壊れていて、ポヤに対して頬っぺたをつついたり無意味に追いかけたり子供みたいな悪戯ばかり仕掛けてくる。その度にポヤはペペをちょっと嫌がるけれど、ペペから見た自分は同年代かちょっと上のお姉さんなんだろうと思い直して、自分もペペのことを同年代の男の子だということにして叱ったり言いくるめたりしている。男の子をやり込めるのはポヤの得意技なのだ。
そんなポヤには怖いことがある。いや終戦直後の街は怖いことだらけなのだけれど、それよりも飛び抜けて怖いことが1つある。
それはペペが元に戻ってしまうこと。ポヤが知っているペペは無邪気でおふざけが大好きな子供のペペで、大人のペペがどんな人間なのか全く想像もつかない。
もしも大人のペペがものすごく怖い人だったらどうしよう。子供が嫌いだったらどうしよう。どこかに売られてしまうかも。奴隷にされてしまうかも。ころされてしまうかも。ペペが元に戻るところを想像する度に、ポヤの頭の中でそんな恐ろしい考えが浮かんでくる。
でもそうすると、ポヤの顔が浮かないのに気づいたペペが決まってポヤの前に座り込んで「ポヤー?」と顔を覗き込んでくる。それからポヤの頭を撫でたり頬っぺたをつついたり、時には抱き上げてグルグルと回り出すのでポヤは「やめて」と言いつつついつい笑ってしまう。
怖いものがペペなのに安心させてくれるのもペペだなんて。神様、どうかペペを元に戻さないで下さい。子供のペペでいさせて下さい。安心させてくれる方のペペのままでいさせて下さい。
ポヤは1人で祈りつつ、これからもペペと暮らしていく。
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