ぺぺの欲しいもの
いつかの時代のどこかの星。戦争で両親を失った孤児のポヤは、川沿いの掘っ立て小屋でペペという大男と暮らしている。
ペペは心が壊れていて、ポヤに対してイタズラをしたりそこかしこを走り回ったりと子供みたいな振舞いばかりするので、ポヤはペペに対してお姉さんのように接している。
雪がちらつくようになった冬の夜、ポヤは寒さをしのぐ為にペペと2人、いつもペペが羽織っている分厚いコートを掛け布団にして寄り添いながら眠っていた。太くてたくましいペペの首にかけられたドッグタグのチェーンを見ながら、ポヤはあることを思い出した。
ペペの誕生日は今頃じゃなかったかしら。前にドッグタグを見てみた時、誕生日といって今ぐらいの日付が書かれていたハズ。いつもお馬鹿なことばかりするけど、悪い人から守ってくれるし仕事とかも手伝ってくれるし、誕生日のお祝いぐらいしてあげようかな。そう思ったポヤは翌朝、芋団子を食べるペペに対して「何か欲しいものある?」と訊いてみた。
「ほしいもの?」
「アンタ確か今ぐらいが誕生日でしょ。お祝いに欲しいものぐらい聞いたげる。その辺から拾って来れる範囲でね」
「えーじゃあ…」
ペペの瞳が真っ直ぐにポヤを見つめ始めた。それから右手をポヤの方に差し出して、指をポヤのほっぺに這わせたり煤だらけの髪を撫でたりし始めたので、ポヤは驚いて後退りした。するとペペが四つん這いになってポヤにぐっと近づいた。
何がしたいんだよう。鼻が付きそうな程の距離で見つめられて戸惑うポヤ。
ペペはしばらくポヤを見つめ続けた後、ニッと笑って「なんかおいしいもの」と言った。
「なんかおいしいもの、くいたい」
おいしいもの。おいしいもの。おいしいもの。心の中で3唱してからポヤはハッと我に返ってコクリコクリと頷いた。
「食堂の跡とか探ったら缶詰ぐらい出てくるかも」
「きょういってみよ」
「うん」
きまりーと明るい声で言いながらお出かけの支度を始めるペペ。そんなペペを見つめながらポヤは、ペペが嘘をついているなと1人で勘ぐった。
ペペが本当に欲しいものは。考えて、ポヤは顔を真っ赤にした。
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