第13話 追憶

 「今ここで、キミとの戦いに決着を着ける!」

 

 そう言って、拳銃を構えて発射する。向こうも負けじと発射する。

 両者の間を無数の弾丸が飛び交う。ある弾は土に減り込み、ある弾は林へと消えていく。


「当たってねえぞ!」


「キミもね!」


 ボクは怒りに任せて弾を撃つ。ガイも気分が高揚している様で、双方弾丸が全く当たっていない。


「このままじゃ埒が開かねえな!こっちで勝負だ!」


 そう言ってガイが取り出したのは、ナイフ。

続けてボクもナイフを取り出す。

 木製の持ち手に鉄製の刃がついた、長さ20cmほどのナイフである。表現としては、ナイフより短剣の方が近いだろう。


 ナイフが競り合い、火花が散る。何度も何度も金属が当たる音が聞こえる。


「だいぶナイフの扱い上手くなったんじゃねえの?褒めてやるよ。」


「そっちこそ、なかなか強くなったじゃん。」


「へっ、アルヘルムの落ちこぼれがよく言うぜ。昔は俺とじゃ10秒も持たなかったのにな。」


 喋っている暇は無い。一刻も早くガイを殺さなければ。フィフォンは今、無傷の様だけど、これからガイに殺されてしまうなんて事もあり得るのだ。


「ちょっとお喋りが過ぎるね。猶予は無いって言ったはずだけど?」


「お前には殺せねえよ、エリセス。」


「ボクは一応年上なんだけどな。反抗は良くないよ?ガイ。」


「知ったこっちゃ無え。殺す事には変わり無いんだからよ。」


 再び、刃を交える。このままでは本当に進まない。

(どうすれば...考えろ、考えろエリセス。)


「色々考えてる様だが、お前にいい事教えてやるよ。」


「知ってたか?ナイフ使ってる時に、ナイフ以外使っちゃいけ無えなんてルールは無いんだぜ!」


 なんと、ガイは刃を交えた状況で拳銃を取り出した。近距離での拳銃使用は絶対的に有利。かつ即死を狙う事ができるのだ。

(これは...凄くまずい。なんとかして拳銃を封じ込めないと...。)


 すでにガイは拳銃を構えている。すぐに対応しなければ、彼ならボクを一発で殺してしまうだろう。

(スペアのナイフが2本あるけど...弾の衝撃を緩和出来たとして、確実に折れると思う。でも今はそれしか無い!)


 すぐにポケットからナイフをもう一本取り出し、左手に持つ。

 左手に持ったナイフを上向きから下向きに持ち帰て、拳銃の軌道を読んで構える。

 運が良ければ回避できるだろう。ただ、最悪の場合......いや、その事を考えるのはやめておこう。


 それとほぼ同時にガイの拳銃が発射され、読んでいた通りの軌道を描く。そのまま左手に持っていたナイフに当たり、ナイフの刃の部分が強い衝撃と共に弾け飛ぶ。

 発射直後、その瞬間にできる隙を回避するため、ガイは距離を取っていた。


「咄嗟の判断だが、なかなか悪く無えな。」


「まあ、ボクもアルヘルムの端くれだからね。それくらいは出来るさ。」


 なんとか即死を回避する事は出来た。さて、ここからどう巻き返すか。


「さて、なかなか面倒な手を使ってる様だけど、こっちからも行かせて貰うね。」


 ボクはスペアのナイフ②を取り出し、両手ナイフ装備で飛びかかる。

 ガイは拳銃&ナイフ装備を続けている。

 しかし、ボクにも秘策がある。実はこのスペアナイフ②、特注である。手持ちナイフが鉄製なのに対し、このナイフは1級品の玉鋼で作られている。


 つまり、『拳銃を叩き切ることも可能』ということだ。

 

 ボクは片手でガイのナイフを抑え、玉鋼のナイフで拳銃に斬りかかった。

(いける、これならガイの拳銃を封じ込められる!)


 カキーン、という金属がぶつかり合う音がして、ボクは気づいた。その拳銃が、黒曜石で覆われていたことに。コーティングは剥がす事ができたが、拳銃本体までは達していない。

(なっ...!これは、黒曜石...!)


「な、んで...。」


「残念だったな。これは黒曜石でコーティングされてんだ。拳銃を切れる程のナイフが来る事は想定済みだ。基本だろ、これくらいはな?まったく、本当に甘いぜ。」


「お前のそのナイフ、材質から見るに玉鋼だろ?黒曜石を剥ぐのがやっとだろうな、そんなんじゃな!」


 そう言って、ガイは引き金を引いた。

 油断していた。この瞬間に、隙が出来るのだ。それを狙うのが、

   

    ー暗殺者の仕事なのだー


 2発、弾丸が発射される。1発は避けられたが、2発目は左腕に。


「ぐっ...。なるほど...。右腕がやられちゃったよ。」


 ボクは右腕を抑えながら答える。しかし、血は止まりそうに無い。


「右腕は機能しなくなったか。じゃあ後は殺すだけだな。手こずらせやがって、困ったもんだぜ。」


「っと、ただ殺すだけじゃ面白く無え。苦しんで貰わねえとな。」


 そう言って、ガイは近くに落ちていたある

”もの"を拾ってきた。

 それは、兵士の死体である。そんなものどう使うのか。


「じゃ、まず一投目だな。」


「一投目?...なんの、事だ?」


 ガイは死体を手に持ち、高く上に掲げた。この姿勢、まさか。


「おらよッ!」


 死体が宙を舞い、ボクの方に落ちてくる。投げたのだ。死体をボールの如く投げたのだ。


「がはっ!」


 強い衝撃と共に吹き飛ばされる。そのまま木に激突した。しかし、まだ終わった訳ではなかった。


「1人で終わるわけ無えだろ!」


 続けて何人もの死体が投げられる。その度に吹き飛ばされ、血を吐いてしまう時もあった。


「はぁ、はぁ...」


 すでにボクはかなりの怪我を負っていた。立っているのがやっとだ。


「これで終わりにしてやるよ。そろそろ飽きてきたしな。次で殺すぜ。」


 そう言って死体を投げてきた。ボクは吹き飛び、軽く脳震盪を起こす。頭がぼんやりしてきた。

 木に打ち付けられている状況で、昔の記憶が蘇ってくる。

(これが...走馬灯ってやつなのかな...。)


 気づけばボクは、自分の記憶を遡っていた。封印したあの記憶を。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 今話はちょっと短めです。許して。

 あとがきを近況ノートから小説にしました!

 作者のページから飛べるので、是非見てください!

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