第10話 基地の跡
ールディア視点ー
※8話の続きです。
ザクロスが腰を屈め、何かを覗き込んでいる。
「どうした、何かあったのか?」
「うちの軍服が落ちている。大量にな。ただ、フレイスの軍服は無ぇ。全部焼け焦げちまったみてぇだ。」
「分かった。...ん?これはなんだ?」
私が見る先には、白い革状のものが落ちていた。
「これ、何の素材だったか...。」
「テントの素材に近いな。...ここはうちかフレイスの基地だろうなぁ。」
「こんな所に基地、か...。」
そんな時の事、突然「うぅっ...」という呻き声が聞こえた。
声がする方向には、ゲルンの軍服を着た男性が倒れている。
「人がいるのか⁉︎大丈夫か⁉︎」
駆け寄ったリードが、突然腰を抜かした。
「ル、ルディア...この人...」
リードが狼狽るのも無理はなかった。何故、この人がこんな所にいるのだろう。
「しょ、小隊長!どうしてこんな所に⁉︎」
その人は、小隊長だった。だが、腹部から血を流し、体中が煤塗れになっている。
体の半分は材木や機材に埋もれている。
もう、助かりそうに無い。
「し、新兵達...。成功した、のか...。よく、やった...。ゴホッ、ゴホッ!」
そう言って小隊長は咳き込んだ。どうやら、煙を吸ってしまった様だ。
「小隊長!ここで何があったのですか⁉︎」
「ああ...突然の爆撃でな。1発で...基地は壊滅してしまった。生き残りはいないだろう。君たち以外には。」
「そんなことが...。じゃあ、みんな死んでしまったのですか?」
「そうだと、言っているゴホッ、だろう。」
「私ももうすぐ死ぬだろう。この先、お前達は陸軍に参加しろ...。いつかはここを再興させるのだぞ...。」
「小隊長...。分かりました。ここを必ず再興させて見せます。絶対に!」
「幸運を...祈っている。」
そう言って、小隊長は目を閉じた。リードと私は暫く呆然としていたが、直ぐに動き出す事になる。
「おい、テメェら。戦争に参加すんなら、とっとと行くぞ。ここで渋ってても仕方が無ぇ。」
「...そうだな。わかったザクロス。俺、行くよ。」
「その前に、もしかしたらここにエリセス達が来るかもしれない。だから置き手紙をして行こう。現状は知って置いて貰いたい。
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エリセス達へ
まず最初に、ここはうちの前線基地だ。爆撃でこんな風になってしまったらしい。大きな爆発音を聞かなかったか?
それから、小隊長から遺言だ。この後は陸軍に入り、いつか特殊作戦部隊を立て直せ。との事だ。
私達は先に行っているので、暫くしたら来て欲しい。
byルディア
p.s. もし仲間が死んでしまったのなら、私達も同じ。挫けないで頑張ってくれ。
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「これで良し。じゃあ、行くか。」
「遅ぇんだよテメェは。で、どこ行くんだ?」
「もちろん戦場だが?」
「えー。もうちょっとゆっくり行こうぜ?な?」
「それは別に構わないが...」
「グダグダ言って無ぇで行くぞ。時間が惜しい。」
こうして、私達は戦場へと向かった。
ーもう少し、もう少しだけ何かが変わっていれば、この後の事態も避けられたはず...。だった。なのに何故、どうしてこんな事に...ー
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エリセス視点
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ルディアからの手紙によると、ここは前線基地で、爆撃によって壊滅してしまったという事だそうだ。うちの中隊の兵士は殆どここに居たから、生き残りはまず居ないだろう。
それと、小隊長の遺体を発見したので、手を合わせて置く。
「これから...どうしよう...」
「とりあえず、陸軍に参加しよう。ルディア達もそっちに居るだろうし。」
「そうだね。それが妥当かも。」
「俺達は、また戦場に...」
「それが兵士の務めでしょうが!」
「あ、ああ。そうだな。ベリィの言う通りだ。」
「しかし、どうするかな〜。」
「何が?」
「え〜っとね、これ、軍に『急な爆撃で全員やられました』って言うの?」
「そうじゃない?それがどうしたの?」
「だってさ、新兵だけ助かって上官はサボってた。なんて言ったら上の人達ブチ切れると思うんだけど。」
上の信頼を失えば、私達も巻き込まれ兼ねない。それは困る。
「と、とりあえず、死んじゃったって事は言うしかないでしょ。だってこれはどうしようもないよ?」
「そうだぜ。そう言うことは考えたって仕方が無いぜ。陸軍に行くなら行こうぜ!」
「そうだね。まずは軍の本部に掛け合って、指示を仰ごう。」
前線基地の跡地に軽く墓を建て黙祷し、 ボク達は陸軍へ参加する為、戦場へ向かう事にした。
ーここでまた別の選択をしていれば、アレは避けられたかも知れない。でも、ここに居る時点で、逃れられなかったのかも知れないー
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次回より、エリセス班の活躍回!ルディア班は何話か出てきません。この話は少し短くてすいません。
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