第9話 要塞爆破ー② エリセス視点

注意!この話は残虐表現を多く含みます。

   それでも良いという方、どうぞ。




 その要塞は、山小屋程の、2階建ての建物であった。壁は石で作られており、見たところ、裏口や窓も一切無いようだ。


 周りには4人の兵士がおり、入り口の前に2人、近くにある櫓に1人いた。

 ボク達は茂みに隠れて、様子を伺った。


「敵は7人だね。門、櫓、周辺警備で分けよう。」


「じゃあ、あたしは門の兵士を倒すね。」


「うん。それから、ボクが周りの人達をまとめて殺るから、2人は中に行って。」


「了解した。」「分かった。」


 この2人はNo.4とNo.5のローフィンとフィフォンだ。

 彼らはボク、ルディア、ザクロスを除けば一番強い。結構信頼できる。


「まず、ボクが櫓を撃つから、ベリィは門番。ローフィンとフィフォンは突入しちゃって。」


「そしたらボクも周り蹴散らして行くから。」


「けどエリセス、1人で4人相手なんて大丈夫か?」


「ボクはこれでも3位だよ?それくらい余裕だよ〜。」


「なら良いんだけどよ。」


「じゃあ、櫓を殺ったらスタートだよ。」


 銃を取り出し、櫓の上に居る兵士の頭部を狙って構える。

 そしてそのまま引き金を引く。

 銃声と共に櫓にいた兵士が倒れた。突然の銃声に、兵士達は困惑する。


「良し、今がー」


 そう言いかけた時、向かいの茂みから銃口が見えた。

 ボクは咄嗟に動いたが、仲間達は既に各担当へ向かっている。

 この状況で最も狙われる確率が高いのは...拠点に入ろうとする兵士。


「ローフィン、フィフォン、避けて!」


 そしてボクはもう一つミスをした。叫んだ瞬間、彼らは振り向いて止まってしまった。これでは格好の的だ。相手は1人とはいえ、

見るからに手練れだろう。まずい。やられる。

 銃声が鳴る。茂みから鉛色の物体ー弾丸が飛び出す。


 フィフォンは咄嗟に交わし、避けるが、ローフィンは避けきれず、しかも運悪く、左胸に当たってしまった。つまり...即死だ。


「ローフィン!」


「エリセス、早く行け!早く周りを殺れ!」


 フィフォンが手練れの相手をする中、私は周りの兵士を倒しに行った。


「くっ、ローフィン...ごめん...。」


 周りには4人の兵士。誰からやったものか。左から殺ろう。


「左から殺るよ〜。」


 兵士が撃ってくる弾を軽く躱しながら、宣言通り、左から殺す。

 それぞれ頭、心臓、脇腹、首だ。脇腹では死なないだろうから、もう2発、脳天に撃ち込んでおく。


 ーああ、やはり良い。久しぶりだ。ー


 殺した後で、ボクは気分が高揚している事に気付いた。自然と笑いが漏れてくる。


「フフフ、ハハハハハ。」


 おっと、これ以上飲まれてはいけない。大変なことになってしまう。

 感情を自制しつつ、辺りを見る。

 入り口には、死体が2つ。ベリィは上手くやったみたいだ。フィフォンと共に戦っている。


「ボクが殺るから、2人は行って!これ、渡しとく!」


 爆弾を渡し、手練れと対峙する。


「結構長い間、うちの班員と遊んでくれたみたいで。」


「そのうち1人はなんと、楽しすぎて昇天しちゃったみたいなんですよね。」


「あの子達、疲れちゃったみたいなんで、ボクが変わりますね〜。」


「じゃあ、お喋りも程々にして、行きますか。」


 手練れは撃つ。ボクは避ける。これを繰り返す。何回も何回も。避ける。避ける。避ける。

 しかし、いつまでも避けに徹する訳にもいかない。攻撃をしなくては。


「お、弾丸のドッヂボールだったっけ。じゃあボクも反撃しなきゃ!」


 銃を構え、手練れの方向に向ける。撃つ。

そこは流石というべきか、避けつつも攻撃を止めない手練れ。


「ちょっと、ドッヂボールの球は一個が基本だよ?ボクが撃ってるんだから、やめてよね!」


 延々と攻防を繰り返す。このままでは埒が開かない。


「そろそろ終わりにしようか。ドッヂボールも飽きてきたし。」


 ボクは銃...ではなく、ポケットに入れている拳銃を採り出す。

 これには手練れも驚いたようだった。


「バイバイ〜!」


 何年か前に、ルディアが言っていた事を思い出す。


『発砲に距離は要らない。ゼロ距離で撃てば、必ず当たるんだからね。』


 手練れの頭に銃を突きつけ、引き金を引く。単純作業だ。

 手練れだったものは、頭から血を流して倒れている。


「確かに、直接撃てば当たるよね。」


ボクはそのまま小型要塞へ向かった。

 (どうでも良いけど、この人一言も喋らなかったな。1人で喋ってるのって結構恥ずかしいんだけど。)


 中に入ると、ベリィとフィフォンが話し合っていた。


「あ、エリセスさん!大丈夫だった?」


「うん。全然大丈夫だったよ。結構強かったけど。」


「良かった〜。心配したよ。」


「ありがとね。...ところで、どうしたのかな?この状況は。」


「それがね、この要塞、誰もいないんだ。」


「誰もいない?そんな事ある訳ないでしょ。だってここ要塞だよ?」


「部屋はあるんだが、何も無い。見てみるか?」


 フィフォンが1階の部屋を開ける。

 そこには、何もない石壁の空間が広がっていた。


「本当に...何もないね。」


「ああ。因みに2階もこんな感じだ。」


「なるほど...じゃあこの要塞は偽物フェイクだね。」


「つまり、ルディア達の方が本物って事?」


「そう。この要塞はカモフラージュ用。」


「ボク達は偽物フェイクのために戦って来たという訳だね。」


「じゃ、じゃあローフィンの死は...」


「はっきり言っちゃうと...無駄だった訳だ。」


「そ、そんな...。」


「...ごめんなさい、ローフィン。ボクが叫んだばかりに...本当に、ごめんなさい。」


「しょうがなかった。ローフィンは、助けられなかった。近くにいた俺にも責任はある...」


 その時、爆音が鳴った。


「なんだ⁉︎」


「ルディア達じゃないかな。成功したんじゃない?」


「おお!流石ルディア。あたし達もちゃっちゃとやっちゃおうよ。」


「ああ。っと、その前に、ローフィンを移動させてもらうぞ。」


「うん。」


 しばらくしてフィフォンが帰って来たので、一応要塞を爆破しておいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねぇエリセスさん、この作戦ってさ、なんの為にあったのかな?」


「え?」


「あの要塞って結構小さいじゃん?カモフラージュだと考えると、向こうも同じ大きさだろうし...。それの破壊に意味があったのかな。」


「何か兵器を隠してた、とかじゃない?それが無くなれば、フレイスの兵士も士気がだだ下がり!って事じゃない?」


「はー、成る程そういう事ね。流石エリセスさん。」


「まぁ、兵器にしてもあんな所じゃいくつ入るのかね。そんなに小さいのかな?」


「科学兵器とかじゃないか?」


「フィフォン、それあながち間違って無さそうなのが怖い。」


 途中でローフィンを埋葬し、ボク達は森の木漏れ日を伝って歩いた。しばらくすると、丁度明るい場所に出る事ができた。


「お、戻って来られたかな...。」


「え...?ここって、戦場?」


「おい、嘘だろ、せっかく出て来られたのに...。」


「待って、なんかあるよ?」


 近づいて見てみると、それは置き手紙の様なものだった。


「手紙?なんだこれ...。」


「あ、ルディアからだ!」


「え?じゃあルディアがボク達がここにくる事を予想して書いたって事?あの子天才じゃん。」


「ちょっと内容を見てみようぜ。........⁉︎マジか!そんなはず...。さっきのアレは、」


「フィフォン、どうしたの?何が書いてあったの⁉︎」


 ベリィの質問に動揺を隠し切れていないフィフォンを他所に、ボクはその手紙に近づいてみる。


「どれどれ......なに、これ...。」


 そこに書いてあったのは、衝撃の事実だった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今後、2つの視点を少しの間続けるのですが、1話ごとに交互に投稿するか、まとめて1視点ごとに投稿するか。どちらが良いですか?感想お寄せ下さい。

 何も無かった場合、後者になります。

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