第7話 国境を越えて

 3日間はあっという間に過ぎて行き、当日が訪れた。

 今日は、本部で作戦会議の後、列車で国境へと向かう。国境を越えれば直ぐそこが戦場なので、そのまま戦争。といったものだ。

 

「ついに今日、戦争に行くんだね...。」


「き、緊張してきたな〜。」


「現地に行くまではまだ時間があるから、そんなに緊張しなくても良いんじゃないか?」


 そんな話をしながら、中隊の本部に向かう。


「そういえば、3人はどうしてるかな?ザクロスは良いとして、サンド君やがラード君もそろそろ出兵かな?」


「サンド達は確か157小隊とかいう所じゃなかった?」


「まだじゃないか?私達だけだと思うよ。新兵を即戦力にする所なんて。」


「あ、そっか。うちがおかしいだけか。な〜んだ。」


「あたしもおかしいと思ってたんだよね!だいたい、こんな3日で戦争なんてやばすぎるでしょ!」


 ベリィがワーワーと不平不満を言っているが、なってしまったものは仕方がない。


「ほら、もう着くよ?ベリィ静かに。」


「エリセスさん、これはしょうがないんだよ。口が勝手に...」


「静かに、しようね?」


「...はい。」


 さすがエリセス。一流なのはこういう所だ。

 私達は教室に到着した。


「お、ボク達がいちばんのr...」


「どうしたのエリセスさn...」


「2人ともどうしたんだ?...なんだ、ただのザクロスじゃないか。」


「『ただの』たぁ失礼なやつだぜ。」


「え...?いやいや、なんでザクロスここにいんの?ここはキミの職場じゃないよ?」


「んな事は知ってんだよ。訳あってここに来てるだけだ。」


「へー何?この戦いに参加しちゃうとか?」


「...まぁそんなとこだな。」


「え、マジ?ザクロス本気で言ってんの?」


「しょうがねぇだろ。上の命令だ。『戦争行って来い』だとよ。」


「雑務が出来なくて戦闘向きだったからか?残念だな、ザクロス。」


「んなわけねぇだろ。テメェとは違うんだよ。」


「本当か?十分有り得ると思うが。」


「テメェ...」


 私達が激闘を繰り広げていた時、部屋に人が入ってきた。


「あ、班長さんだ。」


「エリセスさん、リード君ね。」


 2人の言葉を気にすることも無く、彼は現状に狼狽えていた。


「ザクロス...なんで、君がいるんだ?」


「居ちゃ悪りぃか?」


「そういう訳では無くて...」


 どうやら班長さん、もといリードは、ザクロスに多少トラウマがある様だった。

 その後、続々と新兵、上官が入ってきて、恐らく中隊の全員が集まった頃、中隊長が入ってきた。作戦会議が開始される。





「諸君、よく集まってくれた。早速だが、今回の任務の作戦について説明したいと思う。」



「まず、要塞の数は2つで、各所の人数は小隊規模であると見られている。」


「そこで、中隊を2つの小隊に分け、各小隊で分割することとする。」


「双方の任務を完了させた後、我々はそのまま現地で戦争に参加する事になっている。」


「そこから先は、その時次第という訳だ。」


「質問がある者は居るか?...いないな。」


「以上で作戦会議を終了する。1時間後に列車が出るので、それに乗って国境へ向かうぞ。」


 そこで一時解散となった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


解散後、私達とザクロス、リードの5人で集合し、駅へと向かった。


 春という事もあってか、駅は流石に人が多く、長居はできなさそうだった。


「実はあたし、汽車乗った事無いんだよね。」


「実はボクも...」


「俺も見たことしか無いな。」


「お前ら、汽車も乗った事無ぇのか?」


「遠くに行く時に使ったりしないのか?」


「うちは基本馬車だったからね、あはは...」


 そうだった。そういえば、ベリィの家は歴史ある鍛冶屋なんだった。そういう事があってもおかしく無い。

 かくいう私も、汽車はルクシビルから

ここゲルンに来た時に乗ったくらいだ。詳しい事は良く分からない。

 それに対してザクロスは、恐らく色々知っていそうだ。今度少し聞いてみるか。


「そろそろ出発だから、乗ろう。」


「そうだね。汽車の中でも時間はある訳だからさ。」


 こうして私達は汽車に乗り、国境へと向かった。



※汽車の中はカット!この後短編かなんかであげます。



 汽車で3時間の旅の後、ようやく国境についた。


「うっ...。ルディア、もうだべがも。」


「しっかりしてベリィ。汽車で酔うんじゃ、この先やっていけないよ?」


「でも...。ちょっとごめん。」


 そう言ってベリィは木陰へと向かっていった。

 オエエエエエエエエ   ベリィー!

 完全にやってしまっている。それを介護するエリセスもすごい...。

 振り向くと、ザクロスが立っていた。


「乗り物酔いっつうのは自然現象だ。だから...仕方無ぇ...」


 心なしか、ザクロスの顔色が悪く見える。こいつ、汽車ダメなタイプか。


「汽車如きにやられているようで、本当に私に勝てるかな?ザクロス。」


「上等だ...が、ちょっと待ってろ。」


 ザクロスは木陰に(以下略)

 グエエエエエエエエ ダイジョウブカ!ザクロス...

 今度はリードが介護している。

...トラウマも少し回復できたようで何よりだ。


 駅から国境近くにある陸軍の基地に向かい、そこで軍の装備に着替える。茶色の軍服に、身を隠すフードが後ろに付いている。

 さらに、重たい銃剣を背負い、腰には短銃を持っておく。


 着替えた後、外に出ると、中隊の全員が揃っており、中隊長が前に立っていた。


「この国境を越えたらフレイス王国となる。この境界を過ぎた瞬間、我々は不法侵入者となる事を忘れるな。」


 命を狙われてもおかしく無い、という事だろう。


「要塞の近くまでは、徒歩で向かう。そこに前線基地があるので、そこで最終準備の後、実行に移る。」


 そうして30分ほど歩いた後、私達は森の近くにある前線基地にたどり着いた。

 そこには陸軍の兵士が、...ざっと3師団くらいあった。

 偵察隊によると、フレイスの陸軍は5師団居るらしい。

 そろそろ最終準備だと言われたので、中隊本部があるテントに向かう。


「フレイス側の戦力は5師団、我々は3師団だ。つまり、この作戦を成功させられるかにかかっているだろう。」


「帝国のために散り行け。帝国のために生きよ。」


「その信念を忘れないで貰いたい。」


「そろそろ出発としよう。......これより、帝国陸軍第230中隊はフレイス前線基地を出発し、ストラスブール要塞爆破作戦を実行する。全員、用意は良いな。行くぞ!」


 うおーっ!という兵士たちの歓声の後、小隊で集まることになった。



ー第1小隊ー

  配属:ルディア、ザクロス、リード、No.8


 小隊長が話を始める。


「さて、これから出発する訳だが、新兵達、爆弾工作、期待しているよ?確か、ナンバー1とナンバー2がいるんだよね?」


「僕たちは要塞近くで待機しているから。」


 新兵に爆弾を扱わせ、自分達は離れたところで待機、など、全ての危険行為が自分達に被らないようにする為に尽力しているようだ。

 だいたい、私達が失敗したらどうするつもりなのか。新兵だけが責任を負うなんてある訳がないのに。


 そんな時、発砲の音がした。...始まったのだ。


「これを渡します。使用する爆弾です。」


 爆弾を受け取って、私は懐に忍ばせた。


 「作戦の成功と、無事を祈っていますよ。新兵達。」


「...ありがとうございます。成功をさせてみせます。」


 そう言って、私達は要塞へと向かった。





ー第2小隊ー

 配属:エリセス、ベリィ、No.4、No.5

 視点:エリセス


 うちの小隊長は、中隊長だ。だから、中隊長の言うことを聞けば良い。


「それでは新兵諸君、作戦の成功を祈っているよ。」


「我々は近くで待機しているから。」


 さっき、作戦は我々にかかっている、とか言ってたけど、結局ボク達に丸投げなんだ。

 何もせずに待機してるのって、普通は新人さんの方じゃないかな?

 近くで、というのも恐らくここの事だろう。爆破音で近寄るのだ。


「そうそう、これを渡さなければ。」


 そう言われて、手渡されたのは、爆弾。


「これを使いたまえ。威力は高いから、投げたらさっさと逃げるんだよ。」


 爆弾を受け取り、懐に忍ばせる。


・・・その時、発砲の音がした。どうやら、陸軍が戦争を開始したらしい。


「始まったようだね。そろそろ向かってくれ。幸運を祈る。」


「はい、ありがとうございます。必ず成功させて帰還します。」


 一応上官なので、それらしい態度で対応しなきゃいけない。


 爆弾を受け取って、ボク達は要塞へと向かうことにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 恐らく次回から、長期間戦闘に入ります。

ご了承ください。

→詳細は近況ノートのあとがきへ

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