第3話 合同演習
その後、私達は食堂で別れて帰路に着いた。
「ねぇ、ルディア。なんでSクラスに入りたいの?さっきの事で何が分かったの?」
「あのね、ベリィ。私はSクラスに入りたいと言えばそうだけど、実際のところ、自分の力を試したいだけなんだ。自分の力がどれだけ最強に効くかを試したいんだよ。」
「その最も近い道がSクラスに入る事だって思っただけ。」
「ふーん、なるほどね。そういう事ならいいんだけどさ。」
その後雑談をしながら部屋に戻り、その日は終了した。
次の日から私は、猛勉強を始めた。努力に努力を重ねて、1年目が終わる頃にはクラス1位、Sクラスに食い込むレベルになっていた。
それに影響されたのか、ベリィやサンド達も成績を上げ、上位層になった。
そして2年になり、後輩が入ってくる頃、その日は訪れた。
ある日の朝、ベリィと教室に向かっていたら、サイス教官とSクラスの教官が話しているのを見かけた。会話内容を聞こうかとも思ったが、それだと近付き過ぎるので、やめておくことにした。
教室でベリィと話しながら待っていると、教官が入ってきた。
「今日は、お前達にとって初めての模擬戦をする。模擬戦ならもう沢山やったと思う者が大半だろうが、今日は少し違う。」
「なんと、Sクラスとの合同演習を行えることになったのだ。」
生徒達の間に響めきが起こった。Sクラスと戦っても勝てない、と言った声や自分の力を試せる、と言った声もあった。
Sクラスとの合同演習と聞いた時、今朝の出来事に合点がいった。
(あれは演習の相談か。なら当然のことだな。)
「静かに。現在時刻は8:30だ。9:00までに第2訓練場まで来るように。持ち物は装備と銃だ。いいな。」
「「「はい」」」
そう言って、教官は出て行った。
「ルディア、Sクラスと模擬戦だってー!どうしよう!」
「どうもこうもないと思うよ。今の自分の力でSクラスに挑む。それだけかな。」
「だってさ、挑むからには負けたくないじゃん。」
「まぁそうなんだけど、...とにかく行こうか。」
「ちょっと、はぐらかさないでよー!」
ベリィは頬を膨らませる。
私からすれば、Sの基準を確かめられて、運が良ければザクロスも見られる。こんな機会はsに上がるまで無い。だから今やって、十分に対策をしなければならない。
「なんでうちはさ、1回しかクラス分けないの?」
「まぁ、統計4年で2年交代だからね。」
「そう、4年あるなら1年ずつにして欲しいよね。」
「そうだね。」
訓練場にはすでに沢山の生徒が集まっており、中には見慣れない顔、つまりSクラスの生徒達だ。
「お、いたいた。おーい!こっちだ。」
声のする方にはサンドとガラードがいる。どうやら2人とも待ちくたびれたという様子だ。
「すまないね、少し遅れたしまったよ。」
「別に気にしてねーぜ。それより、Sの奴らが沢山いるぞ。今からコイツらと戦うのか〜。」
「おい、そろそろ教官達が来るぞ。」
サンドがそう言った時、教官達が到着した。人は見かけによらないと言うが、サイス教官より高身長でガタイがいいSの教官は、なんだか強そうに見える。
「これより、AクラスとSクラスの合同演習を開始する。全員、4人ずつの班に別れろ。銃は模擬弾の使用のみ許可する。」
教官はそう言った後、バッジのようなものを手に持って示していた。
「今からこのバッジを支給する。これを心臓のあたりにつけろ。これに模擬弾が当たった場合は形が変わるので、その時点で戦線離脱だ。班員が全員戦闘不可になったら敗退で、最後まで残れば勝利だ。」
「それから、この演習にクラスは関係ない。同クラスでも撃たれれば負けだ。それでは、各班配置に付け。20分後に開始とする。」
その後、バッジが支給され、私たちはいつもの4人で班を組んでいた。
「なあ、Sのやつらもだけど、うちのクラスの奴らも気をつけないといけないんじゃないか?そうすると、どうする...?」
「AよりSを優先して叩くべきだろう。」
「Aの方が弱いから、A狙うべきだろ⁉︎」
「食物連鎖の構図は分かるか?土台が減ると、上が残り、上が減ると土台が増える。つまり、強者を減らせば弱者が増えるということだ。」
「え?食物連鎖は違うでしょ?」
「ベリィ、そこじゃない。あと、今回は一時的だから良いんだ。」
「ああ、そっか。」
「とにかく、Sを叩けば良いんだろ?」
「ああ、その通りだ。」
「了解だ。ルディア班長。」
「...サンド、なんか煽ってないか?」
「いや?全然?」
「まあ良い。そろそろ始まるぞ。」
「ついに来たか〜。緊張するな〜。」
「開始!!」
私達は教官の合図と共に、一斉に走り出した。
スタートの後、最初に接触したのはAクラスの班だった。
彼等の第一声は、「やばい、ルディア班だ!」だった。そんなでもないだろ。
彼等が困惑している中、私達は一旦引く事にした。
「ここは一旦戻るか、後回しでいいな?」
「倒せそうな気はするけどな。」
「確かにそうだな。」
「後ろからやられても困る。早く行くぞ!」
「あ、ちょっと待ってー!」
背中を向けて逃走した私達は、彼等をさらに困惑させた。
「あれ、ルディア班が逃げてるぞ?」
「え...?どういうこと...?」
彼等全員が混乱して棒立ちになっている。そのうちに逃走!
「上手く撒けたな、さすがルディアってとこか?」
「いや、ただ逃げてきただけだ。私達ならこれくらいは造作もないだろう。」
「まあね。あたしにすれば朝飯前よ、こんなこと。」
「いや、ベリィはちょっと遅れてたからね?」
「うっ...」
「おい、人だ!」
ガラードの声で私達は茂みに隠れる。見慣れない顔だ。どうやらSクラスのようだ。
「見たところSってカンジだな。」
「よし、やるか。」
「おう!」
「サンドは右、ガラードは左のやつを狙え。私が中央の2人をやる。ベリィはここから援護射撃だして欲しい。」
「OK。適当にキツそうだったらやるからさ。」
「失敗はベリィが拭えるってことだけど、できれば1人もやられないで突破したい。」
「当たり前だ。今後はさらにキツくなるだろうからな。」
「そろそろ移動しそうだぜ。今やるぞ。」
「合図で飛び出すぞ。3、2、1、行くぞ!」
3人は茂みから飛び出し、所定の人物を襲った。班員が皆驚きを示していた。
サンドとガラードは成功し、私は1人目の後、若干危なかったが、後ろからの銃声で2人目がやられたことに気づいた。ベリィだ。
「ふぅ、終わったか。みんな、よくやったな。」
「ああ、てかお前、ベリィが居なかったらやられてたな。」
「あたしのおかげなのだよ、ルディアくん!」
「突然口調変わるのやめてほしいね。ありがとう、ベリィ。」
「ふっはっはっはっは!これで私も一流だ!」
「ベリィ調子乗ってんなあ。痛い目見るぞ。」
「だ、大丈夫だから!変なフラグ立てないで!」
「自信がない奴はやられてくんだぜ?」
「...」
「ガラード、こんなとこで戦意喪失させないでくれ。」
「してないよ!」
「ああ、悪かったな。(棒)」
「反省する気ゼロじゃん!」
その後Sの班とAの班それぞれ2班に遭遇し、Sは倒し、Aも1つは襲ってきたので倒した。
開始から1時間もすると、さすがに殆どいなくなり、遭遇率がだいぶ減った。
1時間経過時の放送では、残り3班と言っていた。
「ねぇ、もういないんじゃない?」
「いや、まだいるはず。」
そう言った矢先、交戦の音が聞こえた。
「おい、あっちで交戦してるぞ!」
「行くよ、ベリィ。」
「残り2班が戦ってるんだよね?」
「たぶんね。」
そして到着し、現場を覗いてみると、両方Sの班のようだ。
その中には、彼ーザクロス・フォーゲンバーグの姿もあった。
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