第1章 

第1話 入学


(いざ書こうと決めたが、何から書こうか...)

(そうだな...まずは生い立ちか。)


 1章 生い立ち

(我ながら良いタイトルだな。)

 私の名前はルディア・ソラリア。

 このゲルン帝国に1907年に生まれついた。

 この国の歴史は古く、2000年以上前には科学文明が栄えていたと言われている。

 しかし、当時の世界大戦の影響で、文明が滅びて科学が衰退してしまったらしい。


 帝国はヨーロッパ州という場所にあり、周りに7つの大国がある。その他小国もあるのだが、一応大国は記しておこう。


ゲルンの西に位置するフレイス王国。

フレイス王国の南にしてヨーロッパの最南端国家であるヒスパール=ポルギ連合共和国。


ゲルンの北にスカディビア王政公国、フィドニア中立国があり、その東には小国であり大国のグレリス大王帝国がある。


 この「小国であり大国」というのは、グレリス大王帝国が本土は小さいが植民地を大量に持っているところから来ているそうだ。


 さらに、ゲルン帝国の南にあるイルビア共和国、

 そして、世界最大の国にして、最大の脅威ことモシエ連邦。この7つである。

 他にも小国は存在するが、まあ主要国家はこんなところだ。


 おっと、前置きが長くなったか。では簡単に私の家庭事情を説明しよう。

 私は、帝国の西にあったオベル三国連合という国の出身だ。

 “あった”という通り、その国はもう無い。

 国内で紛争が起き、3つの国に分かれてしまった。

 ネーディル王国、オベル公国、ルクシビル国の3つだ。

 紛争の際、各国に増援が付き、ネーディルはグレリスが、オベルにはフレイスが、そしてルクシビルにはゲルンがついた。ルクシビルは最も軍事力が無く、真っ先に狙われた。


 私達家族はルクシビルに住んでおり、当然戦火に見舞われた。

 当時幼かった私もそうだった。

 ある時、私が住んでいた街も襲われた。



      新暦1917年 5/11 早朝


 ある日の早朝のこと、私はまだ寝ていた。

 すると、突然フレイス兵の襲撃が始まり、街を銃声が支配した。

 私はその時母に助けられた。

 母はその際に死んでしまい、父は戦死していたので、私は孤児となってしまった。

 そうして、母を守れなかったことを後悔し、復讐のため軍人となった―


 という小説のような展開ではなく、孤児という身分故、最も安定しかつ気を負わず働ける職が軍人だったのだ。

(投げ打つものや家族等何も無いからな...自分でもちょっと悲しくなってくる...)

 その後、12歳まで孤児院近くの学校に、卒業後はゲルンに移り住み、軍学校に通った。



 軍学校では実力ごとにレベルが分けられており、

低い方からF、E、D、C、B、A、Sとなっている。

 私のような亡命孤児が入る為には、特待(SやA)で受かる必要があった。

 結果、Aとして入学することになった。


 そうそう、書き忘れていたが、Zというレベルがある。

 Zの基準は、「S以上の力を持っているが、Sと一緒にしては実力差が大き過ぎる者」のことだ。

 ただ、そんなに強い者が沢山いるわけでは無い。

 50年でたった7、8人だそうだ。要するに天才だ。

 正直言って、そんな奴に会える事なんて人生である訳がないと思っていた。

 しかし、運悪く私の学年に、1人Zがいた。


 入学した時は「Zがいる」という話題で持ちきりだった。

(ZはSと授業してるんだよな...)

(私もSに上がったら一緒の授業か...)

 そんな事を考えていると、隣から声がかけられた

「こんにちは!いや、初めましてかな?」


 声がする方を見ると、ふわふわの金髪に蒼眼の美少女が座っていた。


「あ、えーと、こんにちは。その、名前を...」


(とりあえず名前聞けば良いのかな...こういうのってやった事ないんだよね)

「え?あたし?あたしはべナルト・サン・ハイドリヒって言うんだ。みんなからはベリィって呼ばれてる。」


 率直に言えば、変わった名前だな、と思った。


「女の子なのに変な名前だよね。」


「いや、そんな事ないと思うけど...」


「あなたは?あなたはなんて言うの?」


「あ、私はルディア。ルディア・ソラリアって言うの。」


「へー、よろしくね!ルディア。......ところでルディア、あなたどこに住んでたの?」


「え?ゲ、ゲルンだけど?」


「あー、ごめんね。…なんかゲルンの人でこの髪色って珍しいなって、思ってさ。」


(ここでルクシビルっていうのはなー。ゲルンはルクシビルの味方だけど、ここで言うのは気が引ける...)

 私は赤い髪を持っている。帝国の人は、基本的に

金髪、銀髪、茶髪、黒髪のどれかである事が多い。

 それに対して、オベル地域では沢山の髪色が混在しているため、私は赤い髪となった。

(まあ、オベルでも赤はそう多くないけどね。)


「えーとそれで、ベリィ...さん?はどこに住んでるの?」


「ちょっと、ベリィさんはないでしょー。さん付けはいらないよ。なんか変な感じするし。」


「後、あたしは産まれた時からこの街に住んでるの。だから、街のことは何でも聞いていいよ!」


「へー、ベリィはこの街の出身なんだね。」


「そう。あのね、うちの家って、昔から鍛冶屋やっててさ、”結構歴史あります“みたいな感じなのね。」


「有名な所なの?」


「うん。自分で言うのも難だけど、そこそこは。で、うちの家系では、男女関係なく鍛冶屋の後継になれるように、男の子っぽい名前がつけられるわけね。その結果、あたしはべナルトという訳なのだよ。」


「な、なるほど...中々大変な家に産まれたんだね...」


 なんだかベリィの苦労を見た気分だ。


 そんな話をしながら話をしていると、教官らしき人物が 入って来た。


「えー、この度は軍学校入学おめでとう。私は、この組を受け持つマルコ・サイスという。階級は大尉だ。」


「早速だが、君達には入学式に行ってもらわなければならない。では移動するぞ。」


 そう言われた後、私達はその式場へと向かった。

 式場には、同じ学年であろう同期達と、教師達がいた。

(なんだか緊張してきた・・・)


「これより、第173期ゲルン帝国軍学校入学式を開始する。軍学校長式辞。」


「えーまず、〜」


 何を言っているかよくわからなかったし、そもそもこうした行事は人生史上初なので、とても戸惑ったというのが正直なところだろう。

 こういう時は何があって、どういう事をすればい。 ということを学んだのはその時であろう。


「...それでは、生徒代表挨拶。代表生徒は壇上へ。」


 司会の人がそう言った直後、壇上には一人の男が立っていた。彼は茶髪で身長も160cm程度と、ごく一般の少年の風貌をしていた。

 しかし、見ているだけで威圧されるような眼力、オーラと言っても良いだろうものは、常人を遥かに超えていた。


「あー、ザクロス・フォーゲンバーグだ。所属はSクラス、ランク上はZだ。」


「俺は生徒代表なんつうめんどくせぇモンを押し付けられている訳だが、特に言うことは無ぇ。...あぁ?もう少し喋れだぁ?ったくしょうがねえな。」


「あー...俺はお前らの中で一番強い。俺の今までの経験上、変に喧嘩吹っかけてくる馬鹿がいるだろうから、先に言っておくぞ。そう言う馬鹿みてぇな事はやめとけ。俺ぁ争いは好まねぇんでなぁ。玉砕趣味だっつうなら止めねぇけど。」


「チッ、これじゃあ長過ぎるぜ。何考えてんだアイツ...以上、終わりだ。終わり。」


 彼は話が長いのが嫌いなのだろうか?それともあまり話をしたく無いのか? 

 彼は長いと言っていたが、本当に一瞬だったと思う。(途中で気弱そうなおじさんが彼に何か言っていた時以外)ずっと押し潰されそうな演説だった。こんなに長い1分は無いだろうというくらい。


 話が長いのが嫌いなのだろうか?それともあまり話したく無いのか?ただ一つ、分かった事がある。


 その時が、私が生きてきた人生で最も大きな「殺気」「威圧感」を感じた瞬間だった。

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