意味のない話
意味のない話。頭の中から意味の分からないものが降りてきて、それをひたすら書き尽くすだけ。これの結果は入力の熟練度に依存する。例えば手慣れたスマホのフリック入力だと考えたことがぽんぽん出てくるので意味の分からない文章になりやすいが、ちょっとぎこちないタッチタイピングだと書いていて少し考える暇ができるので多少整った文章になる。変換精度も重要で、MS-IMEのようなあまり頭のよろしくない変換システムだとよけい時間がかかって整った文章になりやすい。
ところでなんでこんな意味の分からない文章を書いているかというと、世の中はあらゆるものに意味を求めすぎではないかと感じているからである。これはなんとなく肌でそう感じているということであって、具体的に挙げろと言われてもうーんとうなってしまうものなのだが。
ただ顕著な例はいわゆるキラキラネームというものの増加だ。私の思うところによれば、キラキラネームは「名前なんてノリで決めちまえ」的な考えの結果ではなく、むしろ考えすぎによって生まれるものだ。
そしてこうなった原因はおそらくインターネットにあるのではないかと思う。インターネットは世界中の情報を高速に・大量に取得することを可能にし、情報が過多となり、より刺激的で高尚な情報ばかりの濃度が高まっていった。その結果それ以外のあらゆるものが没個性に埋没させられた。私はこれを「特別性の危機」と呼びたい。
そして、それによって個性的であることを何よりの競争価値とする考えがある種自然に発生したのだ。この結果人はあらゆるものに特別感を持たせようとし始めた。
人々が特別でありたいのは、アイデンティティを保持しようとするはたらきによるものだと思う。生物を生物たらしめる3大要素は「外界との仕切り」「代謝」「自己複製」と聞いたことがあるが、生物はこれを維持するのを生きる目的にしているように見える。そしてこれを人間の心にまで適用可能だとすれば、自分が自分でありたいという意識は1つ目の要素と関係があるだろう。だから人はアイデンティティを保持したくなるのだと考える。
なぜ意味性を求めてしまうのかを語った。私はそれをあえて求めないということをやってみたいと思ったのだ。いったい何のために? それすらも意味がない。もう意味なんていらないんじゃないか? すべては必然だと考えるか?
実のところ「なぜ、それをするの?」という質問を無限にくりかえせばいつかは詰まるところが出てくる。そういうものだ。それでいいじゃないか。意味なんていらない。ただ気の赴くままに過ごす。こんなことができればいいと思う。しかし、現実はそうはいかない。他人から意味を求められる。まったく意味を追い求めなければ、いつか死んでしまうかもしれない。それは先述の生物としての要素の維持を怠ったからかもしれない。
それでもいい? 死ぬことすら意味のないことと考えるか?
もうよくわからなくなってきた。そもそも意味とはなにか。「意味」の意味は? 辞書で調べると、「言葉が示す内容」とか「ある表現や行為によって示された内容」あるいは「価値や重要性」などと書いてある。今まで「意味を求める」といった時の意味は3つ目の意味の「意味」だ。
意味とは何かと知りたくて調べたら内容だと言われた。じゃあ内容ってなんだ? この意味(!)での内容は「中にはいっているもの、中身」であるらしい。じゃあ中ってなんだ?
このままではらちが明かないが一つ思い出したことがある。それは意味論という言葉だ。これは構文論と対をなす言葉で、言語学や論理学で使われる言葉らしい。構文論は言語や論理を構成するための形式や文法について考え、意味論は意味について考える。考えるといっても実際にやっているのはルールに従って記号を操作しているだけだ。論理学の場合だが。言語学だともっとややこしくなるらしいが私にはよくわからない。
ところでこうやって「意味」の意味を考えるように、それそのもののことを考えることを「メタ」という。例えば哲学そのものを考える哲学学はメタ哲学とでもいうべきものだ。もしかしたら違うかもしれないが。
結果的にこの文章は思考の跡を追うものになってきた。今この文章でこの文章について考えたから、これも「メタ」である。メタはさらにそのメタ、さらにそのメタと繰り返すと、やがては神の視点となる。
もうよくわからなくなってきた。この書き出しはさっきも使った。もういい。このあたりで終わりにしたい。どうしようもない。ただの現実逃避である。
即興詩 ウゾガムゾル @icchy1128Novelman
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