第2話 お兄ちゃんが守るよ

 暑い。


 とにかく暑い。



 顔からは汗が吹き出しているが、俺はその汗を右腕の項で拭いながらフライパンを振る。




「われわれは うぢゅうぢんだ」



 思わず笑ってしまう様なアホな声が耳に届いた。



 扇風機に合わせて、声を出しているのは悲しいかな俺の親友だ。




 こんな暑い時に、こんなアホな事を言っているコイツ。



 悲しいけど妹の思い人だったりする。





 おい、美桜。




 こんな奴の何処が良いんだ?




 すぐにでも追い出したいが、先日、彼女に振られて、でもケロッとしているコイツに、美桜が会わせろと煩い。



 もちろんダメだと言った。




 だってな俺の妹はすごく、すごく可愛いんだ。




 俺に似ないで。




 親友の勇気はまだ、扇風機の前を陣取り、色々、アホな言葉を繰り返している。



 




 美桜。




 こんなアホなコイツの何処に惚れた。




 会わせなかったら、俺の知らない所で勝手にコイツに会うかもしれない。



 そして、可愛い可愛い美桜がコイツの毒牙にかかってしまうかもしれない。



 


 守るよ。



 美桜はお兄ちゃんが守るからね。




 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る